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監督生は夕食も早々と切り上げてスリザリン組み分けされた新入生たちを先導して、地下の寮へと入った。

スリザリン寮は校庭の湖の地下にある。談話室は壁と天井は荒削りの石造で、天井からは落ち着いた色の照明が部屋を照らしていた。窓からは湖の中を覗き見ることができて、水族館のような知的な感じが、ディアナはとても気に入っていた。
他の学年はそれぞれ自室に引き上げる中、新入生だけは監督生から祝辞や寮の説明のために残された。自分の前に挨拶をした男子の監督生の、如何にも純血主義万歳といった祝辞に頭痛をおぼえながらも、ディアナはその後に続いて挨拶をする。


「ホグワーツ特急で会った子がいるかもしれない…監督生のディアナ・マルフォイよ。スリザリンへようこそ。
我が寮について悪い噂ばかりを聞いたことでしょう…闇に染まる者が多いだとか、純血思想で荒々しいだとか…。馬鹿馬鹿しいですわね?」

さきに男子監督生が言ったことを全て取り消す。青筋を立てていたが気にしない。

「確かに純血の魔法使いたちの多くが我が寮の出身者であることは本当だけど、噂のように 闇に染まる者が うちの寮だけから出ているわけはないもの。確率論よね」


新入生にはムッとした表情のもの、ほっと胸をなでおろしているもの…それぞれだ。


「人は血筋だけで決まるものではないわ。ホグワーツで広く学び、たくさんのものを見てくださいな。そうすればこの寮で よい知識とよい友を得るでしょう。

さて、もう夜も遅いから部屋へ案内しましょう。各部屋に 寮と構内のしおりが置いてあるので目を通しておくように。女子生徒はわたしについて来なさい」





翌日、大広間のスリザリンのテーブルはディアナの発言で騒ついていた。賛否両論だったのだが…スリザリンにも純血主義ではないものも多数いて、監督生として当然の発言(現に今までのスリザリン監督生が、何人もこのように指導している)ではあったのだが ディアナ・マルフォイが公言したことが問題だったのだ。
誰かからチクリが入ったらしく、翌朝にはルシウスから叱責の手紙が来ていたが、ディアナは一瞥して手紙を畳んでしまった。
隣で目玉焼きを突いていたメアリが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「監督生としておかしな事は言ってないわよね?」
「ディアナも大変ね…」

ちゃんと読め!とばかりに何度も開こうとする手紙を 朝食のオートミールでくっ付けて開かないようにしているディアナを見て、メアリは感嘆した。








「去年の秘密の部屋で、姉さまは錯乱呪文にかかったに違いないんだ!」


ドラコは同級生たちに説明した。
昨夜の「純血主義なんてナンセンス」発言で、一部の人たちからディアナは冷めた目を向けられていた。つまりーーそういう主義の人たちだ。マルフォイ家は魔法界で純血主義思想の先頭をはしってきた家系である。
姉がそれを否定するなんて考えもしなかった。いや、彼女ははじめから肯定もしなかっただけだ。するとずっと姉は自分たちを騙していたのだろうか。家族を裏切ったのだろうかと思うとドラコは胸を掻きむしるような苦しみを感じた。


「ディアナさまも何かお考えがあるんじゃない?」

ノットがフォローを入れたが、ドラコは首を振る。


「昨夜、姉さまが言ったんだ。『ハグリッドの授業には気をつけろ、ヒポグリフには礼儀をわきまえろ』って。ただの魔法動物に礼儀だぞ?」

信じられるか?といってドラコはノットに迫ったが、ノットは隣にいるザビニと視線を交わしただけだった。
ヒポグリフは知能が高い事で有名である。ハグリッドへの注意と合わせても別段おかしな事のようには思えなかったのだ。

後日、調子に乗ったドラコはまんまとヒポグリフに怪我をさせられた。









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