05




監督生は何かと忙しい。
1年生のお世話や、各教科の先生方の手伝い、寮間の橋渡しなど 授業がおわったからもやる事は多くあった。食事や入浴が遅くなることもあり、監督生のみが使えるバスルームがあるのも納得だ。
1年生のお世話でお見舞いが遅れてしまったことで、ドラコは完全にヘソを曲げてしまったようで「姉さまなんて大嫌いだ!」とグラッブとゴイルの影に隠れて逃げていってしまった。ブラコンで有名だったディアナは それからちょっぴり元気がない。




「反抗期がこんなにも悲しいものだなんてしらなかったんですの…」

セブルスの自室にあるソファに身を横たえてディアナはため息をついた。ずっと湿っぽい彼女にセブルスはため息をつく。
脱狼薬用の材料を揃えているところに駆け込んで来て、ずっとぐずついている。ディアナがいて薬が調合できないということではないが、目の端でめそめそされると流石に気が散る。


「仕事の邪魔だ」
「セブルスまでわたしを邪険にするんです?」


ホグワーツにいる間、ディアナは公私を分けるようにセブルスを『教授』と呼んだ。それが今彼女は『セブルス』と言った。
いつもは軽口で返ってくる返事が予想外に傷付いた声色をしていたため、セブルスは眉根を寄せた。その表情を見てディアナはよろよろと起き上がる。


「悲観してるだけだって分かってますわ。そんな顔しないでください」
「何も言ってないだろう」


セブルスは魔法で紅茶セットを出した。
茶葉が1人でに配合され、ポットにお湯が注がれる。

「1杯だけだ」

そういってセブルスがローテーブルに飴玉を転がした。見慣れた包み紙にディアナは頬を緩める。


「教授、いつもこればっかり」
「そうか?」
「そうですわよ、昔からずっと!」

存外嬉しそうな様子に、セブルスはやれやれと息を吐いた。







その後、廊下やスリザリン談話室でドラコを待ち伏せするも 見事に避けられて一度も会えないまま数日が過ぎ去った。同級生のノットやパーキンソンは見かけるので、ちゃんと授業に出て食事もとっているようなのだけど、ことごとく出会わない。
頑固なところも父親似だよなあ、とディアナは諦めがついて、ドラコが落ち着くまで待つことにした。

ダンブルドアに呼び出されたのはハロウィーンの頃だった。城の警備のことや魔法省のことで多忙のはずのダンブルドアだが、たっぷりした艶やかな白髭も、年の割に溌剌としたその表情もくたびれた様子はない。2、3 話しをしてディアナは目の前のダンブルドアを見つめた。悪いことをしているわけではないのに、全てを見透かす明るいブルーの瞳にはそわそわと落ち着かない気分になってくる。


「ブラック家由来の予知夢能力…。わしにはそれだけのように見えないのだが、Ms.マルフォイはまだわしに話すことはないかの?」

「秘密主義な校長先生に言われても説得力ありませんわね。…ほら、女性は秘密を待ったほうが美しいといいますわ」
「そんなことをせずとも君はとても魅力的じゃよ」

のらりくらりとして引かない両者に、止まり木の上の不死鳥がクエェ…と鳴く。


「しかし君がこちら側に来てくれたことは大きい。その勇気に感謝する」


勇気なんてないのだ。
せめて、この後の未来がどう転んだときでも家族が生き残る道を残しておきたいだけで、それはただの保険である。


「数奇な運命じゃのう、Ms.マルフォイ」
「……言わなくても知っているんじゃないですか」
「こういうのは直接聞かねば無効じゃて」


テーブルに肘をついて行儀悪く悪態をつくディアナをダンブルドアは笑い飛ばした。








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