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試験官の声が教室に響く。試験が終わったのだ。
防衛術の答案を裏返しにして、生徒たちはようやく終わったという安堵やら書ききれなかった悔しさなどを漏らしながら席を立ち、教室から出て行く。ディアナは静かにペンを置いてクィレルを見たが、すでに手早く答案を集めだしており目が合うことは終ぞなかった。


この時はたしか ダンブルドアは魔法省かどこかから呼び出されていて、不在だったはずだ。この後に動き出すのだろうなとディアナはぼんやりと考える。

クィレル教授は生徒の顔色を伺うようなところがあった。元から臆病な人だったのだと思う。ダンブルドアに認められて防衛術を教えるほどなのだから、闇の魔術の危険性をよく知っていたはずで、初めから帝王に心酔していたとは考えられなかった。やはり闇の帝王に寄生されて、思考を少しずつ変えられたのだろうか。
クィレルは防衛術を極めていくとともに徐々に闇の魔術に興味をもっていったのだろう。そして風前の灯火となっていた帝王と出会い、利用すれば自分にも強大な魔力を得られると考えたのではないだろうか。帝王の開心術の前ではそのような思惑は逆に利用されていただろうに。

ふと、思う。闇の陣営の周りにはそういう人がほとんどだったのではないかと。存在感、話し方、声…。ヴォルデモートのそれらはどれをとっても魅惑的で、小さい頃は抗いようのないそれがとてつもなくおそろしかった。父が闇の陣営から抜けてくれたら…とも思ったが、それはマルフォイ家の家長としてできなかったのだろう。それほどまでにマルフォイ家は闇の恩恵を受けていたのだから。
そうやって、甘い汁を求めて、大きすぎる力には人が集まってくる。


(まるで宗教問題みたい…)


似たようなものなのかもしれない。
信じるものが 神という名の理想なのか、高潔な魔力を証明する血なのか。それぞれ何を想っていても尊重すれば争う理由にはならないのに…前世から日和見である自覚はあった。



「おっ、スリザリンの姫が教室から出てきたぞ!」
「おや、試験が終わったというのに浮かない顔をしている…こりゃ科目を1つ落としたかな?」
「なるほど、Ms.マルフォイも人間だったということか」


解放感でいっぱいなのか、中庭の草の上を 靴を脱いで裸足で歩いていくグリフィンドールの3人組が上機嫌に絡んできた。


「ウィーズリーズ、ジョーダン、聞こえてますわよ」

「やっべ!魔法で氷漬けにされるぞ!」
「「にげろー!」」


青い草の上をキャッキャッと駆けていく様子を見送って、空を見上げる。そろそろポッターたちも行動を始める頃だろうか。

ディアナは物語が進むためにも、彼らが無事に帰って来ますようにと祈るしかなかった。











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