08




コウモリのような黒いシルエットが、鋭い目をしたクィレルからディアナを庇うように進みでた。



「クィレル、生徒を巻き込むのか…」

「あ……な、なんで…よりによって、こ こんなところで…セブルス…」
「わたしの寮生から『クィレル先生から呼び出しを受けた』と報告がありましてな」


セブルスが背後のディアナを見やれば、セブルスのローブの端をつかんでクィレルから身を隠していた。ここは大人しくしているつもりのようだ。


「クィレル、ここは我々だけの話で済ませようではないか。…それで?ハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もう分かったのかね?」
「あ、で でも セブルス…わたしは」
「わたしを敵に回したくなければ」

先ほどの流暢な喋りはどこに消えたのか、クィレルはしどろもどろに言い訳を並べる。それをセブルスの冷たい声がさえぎった。


「いいでしょう、近々また話をすることになりますな。それまでに どちらに忠誠を尽くすのが考えておいてもらいましょう」

そういうとセブルスはディアナの肩を抱いて城へと歩き出した。








日も沈み、あたりは既に薄暗くなっていた。ホグワーツの城内に入ると、セブルスはディアナから手を離し、ディアナは振り返っておずおずとセブルスを見上げた。


「教授、あの」
「どれだけ心配したか…!」


助けてくれてありがとうございました、というディアナの言葉はセブルスの怒号に飲み込まれた。滅多にない 感情をにじませた声に、ディアナはブルーエメラルドの瞳を丸くさせる。
意外にも大きな声が出てしまったらしい、セブルスは決まりが悪そうに吐き捨てるようにいった。


「…スリザリン 10点減点」
「教師に呼び出されて禁じられた森に来たのに?」
「うるさい、お前はクィレルのことを知っていてここまで誘き出されたのだろう!?」
「弟をダシに使われたら そりゃいい気分しないですわよ!諸々の行き場のない怒りがあるからってあたらないでください!」


生徒たちは皆夕食をとるために大広間に集まっており、普段は厳格な魔法薬学教授と、スリザリンの才女の言い合いを聞く者はだれもいなかった。


「これはルシウスに報告させてもらうからな」
「ひどい、そうやってすぐお父さまの名前を出して!」
「きみにはいい薬だ」
「口に苦すぎますわ!」




後日、両親からのたしなめる内容の手紙が届いて、ホグズミードにて甘いものを買い漁るディアナの姿があった。










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