確かにそれは恋だった 3



確かにそれは恋だったのだ。
初めて彼女を知った 仄暗い図書館での素の表情、参考書の貸し借りをしながら見せてくれた気を許したような笑顔、クィディッチの試合後に自分よりも悔しそうな顔をしながらも励ましてくれた優しさ。きっと君は友だちとしての扱いだったかもしれない。それでもぼくはきみに恋をした。理屈ではないんだなあ とセドリックは思う。

クリスマスパーティのディアナ、綺麗だったな。ダンスの間中 彼女を独り占めできるのだと考えたら胸が高鳴った。そのまま手を離したくないと踊っていたら「疲れたから休んでくる。そんなに踊りたいのなら他の子とどうぞ」と言われて落ち込んだな。

課題の直前にはお守りをくれた。
きっとそれは『この事』に関係していたに違いない。彼女の生家はマルフォイ家だ。なにかしらの情報を持っていてもおかしくはない。ーー目の前には黒いフードを目深に被った仮面の男ーー背格好を見るからに男性なのだろう、そしてフードからこぼれた彼女によく似たプラチナブロンドの長髪を見て、走馬灯を見終えたセドリックはそう悟った。

目の前の男は、嗄れた声に「邪魔者は殺せ」とけしかけられたというのに 自分を見て躊躇しているのだ。その間に咄嗟にブレスレットに触れる。焦れたようで急かす声が再び男に掛けられる。男が一歩踏み出した。ハリーは無事か?…大丈夫そうだ、狙われているのは自分だけのようだ。いや、違うな。最初から狙いは『ハリー・ポッター』だったのだ。ハリーが優勝杯に先に触れ、この場所へと移動させられる。そういう算段だったのだ。
男の足元にしゅるりと動く影を見つけ、身を引こうと腕に力を入れるが 動く前に体を拘束されてしまった。拘束するものーーセドリックの太腿ほどの太さがある大蛇は 上半身にもぬるりと巻きついて、恐怖する様子を楽しむようににやりと口を開く。赤い口蓋とぬらめく牙が目に映った。隣にいるハリーの「ひっ」という引きつった悲鳴が聞こえるのと同時に首に熱い痛みが走る。強い力で首を折られるのかと思えば、蛇は案外柔く咬んでいるーー違う、これは蛇毒を注入して苦しみに嬲り殺す気なのだと セドリックは気がついた。気道にまで刺し貫かれてはいないようだが、呼吸するのも辛いほどに 息を吸うたびに業火のような痛みがセドリックを刺し貫く。思わず蛇を振り払って自身の首を掻き毟る。ゆらりとセドリックから離れた蛇がこちらを見てニタニタと嗤っているような気がした。
もういっそころしてほしい。セドリックが首をおさえて体を丸める。

パン、という弾けるような音とともにブレスレットが弾け飛んだ。その衝撃に撃たれたように、大蛇も吹っ飛ぶ。
セドリックの元にふわり、と花の香りが届いた。その香りを吸うと 呼吸が楽になった。


(ごめんね、)


「守りの呪文か、アバダ ケダブラ!」


(何も気にせず、セドを守れたらよかったのに)


花の香りとともに泣きじゃくるような声が聞こえた気がした。緑色の閃光が迫り来る。
いいんだよ。セドリックは目を瞑る。
誠実に、ぼくの想いに応えようとしてくれた。ただ それだけでーーああ、最後にデートはしたかったかな。だってぼくはちゃんと優勝杯に触れたんだから。


セドリックの意識はそこでプツリと切れた。











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