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フワンテはふわふわと風に乗って、おおぞらを飛ぶのが好きだった。高い高い空の上、晴れた日は人間が作ったたくさんの巣や水がたくさん集まって出来た川や湖がくっきりと眼下に見えて、光のかげんでそれはそれは綺麗だった。くもりの日は自分と同じようにふわふわと流れていく雲が体にあたってひんやり気持ちよかったし、雨の日は自分の体の上ではじけた雨粒がぱちぱちと音を立てて流れ落ちていくからなんだか好きだった。嵐や雷の日なんかは、やっぱり少し怖かったけれど、それでもいつもと違った様子が見れるから、嫌いではない。

フワンテは特に、うんとうんと空の上にあがって、太陽と雲以外は何もない場所に行くのが好きだった。そこに行くにはフワンテがとてもがんばるか、それか風がたくさん吹いている時しかいけないのだけれど。だから他の生き物にも、あの場所から見る景色の美しさを知ってほしいけれど、他の生き物はフワンテのように軽い体をしていないから、中々そこにいくのが難しいらしい。それが少しだけ残念だった。

でも、そんなちょっぴり寂しい場所でも他の生き物がこれないわけじゃない。時々ものすごい勢いで空を飛んでいくドラゴンポケモン。人間の助けをして、テガミというものを運んでいるらしい。前に、ぶつかってしまった時に助けてもらって少し話をしたから知っている。

それから時々だけれど、上へ上へ上がってくるフワンテの姿に似た様々な色の何か。それはだいたい2,3個まとめて上がってきて、それからフワンテよりももっともっと、太陽に近いところにあがっていって、それからぱちんと割れてしまうのだ。だから、あれが同族じゃないのを知っていてもフワンテは太陽のそばに行こうとしない。だって、少し怖いから。ドラゴンにあれはふうせんというんだと教えてもらっても、自分と似た物がぱちんと壊れるのはあまり見たくない光景だった。でも、今自分がいるとても気持ちいい場所から離れたくもなかった。

だからフワンテは上にも行かなかったし、下に降りることもしなかった。時々ドラゴンポケモンが通る以外は何も変化がない、個体によっては酷くつまらない場所と言うかもしれないそこ。でもフワンテはどちらかというと一人が好きだったし、高い高い空からふわふわと世界を見るのがとても好きだったから全く苦痛ではなかった。寧ろ、許されるのならそこにずっと住んでいたかった。

でもフワンテの体はとても軽い。つよい風が吹くと、それに耐えられなくてどこかに吹き飛ばされてしまうぐらいには軽い。だからフワンテは風の加減によっては地面すれすれまで来てしまって、残念に思いながら上を見上げるしかなかった。もちろん逆もあり得るのだけど、フワンテにも恐怖と意地というものがあるから、今のところある一定の高さまでしか上がったことはない。きっとドラゴンだったら、フワンテも高い所なんて平気だったんだろうけど、残念ながらフワンテはふわふわとした何かだったからだ。

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