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自分がいるべきところはここじゃないような気がした。昔からふと感じる違和感。何気ないことでぼんやりと思い出す知らない記憶。何故か知っている知識。それを誰かに相談しようとは思わなかったし、これはおかしなことであるとなんとなく分かっていたから特に不審に思われることはなかった。それでも年々増していく違和感に、自分は一体何なのかとかそういうことを思いながら、ただただ生きていた。知らない記憶の中の知識を使って、それとなく便利に生きながら。

そんな時ある女を拾った。不思議な格好をした女だった。太ももまで足を出した破廉恥な格好。どことなく外つ国に通じるような奇抜な着物に靴。山の中で一人倒れていたのを、見たことがない服装なはずなのにどこか懐かしい心境に陥ったため持って帰った。自分が仕事に使っている小屋の中で、木が燃える音が響く。そこそこ大きな音なのだが、女は目を覚まさない。かれこれ2刻はこのままだ。

「おい」

肩を揺さぶるとううんと声を上げた。気を失っているわけではないらしいと思って、柱に縄を結んで女の足に固く縛り付けた。部屋を出ている間に逃げられてはかなわない。

「夕餉の時間に、またくる」

聞こえてはいないだろうが、そう言い残して扉を閉める。乾いた木と木のぶつかるかちんというそこそこ大きな音がしても、小屋の中の気配はそのままだった。


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