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小屋に着き、調味料やらなんやらと共に買ってきた1匹のひよこを外に放す。ひよこは暫くぴぃぴぃと鳴いてあちらこちらと駆けずり回っていたけど、やがて落ちついたのかこつこつと地面をつついてなにかを食べ始めた。肉を食べる鳥や、動物対策にあとで囲いやなんやらをつくらねばなと思う。

「ちびの様子はどうだい?」
「弱ってもないし、元気そう」
「ほんとうだ・・・・・いやーしかし、なんど見ても雛ってのは小さいね。こんなに小さいと掌にのせても重さなんてわかんないだろ」
「うん、ちゃんと育つのかちょっと怖い」

夕飯の支度をしてくる、とちょこまかうごきまわるひよこを眺めている慶次に声をかける。俺はもうちょっとこいつを見てるね、と返事が返ってきたのに頷いて、小屋の中に入った。

「暗いな」

夕方になると、もう小屋の中は闇にひとしい。電気が無いとやっぱり不便だなぁと思いつつ掌に炎を起こす。そしてその起こした火をふわっと空中にうかせておけば灯りは完成。とても便利である。しかし、この不思議な力はなんなんだろう。慶次に聞いてみようと思うけどでも異端なものだったらいやだしなぁ・・・・。せっかく仲良くなれたのに。

出来るだけ見せないようにしよう、と思いながら調理を進めていく。サトイモと人参を切って、魚の干物を沈めておいた鍋の中に投入する。いろいろ買ってきたから、今日は塩味以外の料理が食べられるのだ!テンションもだだ上がりというものである。

「…………っ、…………!……!!」

お味噌をとかしたそれを一口、おたまですくって口に含む。口内に広がる久しぶりの豆のうまみに私は悶絶して声にならない悲鳴をあげてゆかをばんばんと叩いた。おまけに目には涙がにじんだ。食の文明開化である。人間、食べ物でここまで感動できるのだ。ちなみに今までの食事は塩オンリーだったので原始時代に等しい。

「…………っナマエさん!ねぇ!ちょっと!!」
「ふぉっ!?」

ふふふもう一口味見を・・・・と思ったところで慶次がばん!と扉を開けた。私はびっくりしておたまを取り落としたが、慶次はそれどころではないようだ。ぜぇはぁと息をきらしている。なんでだ、その扉とさっきお前がいたところはそんなに離れてないはずだろ。

「あれっナマエさんバサラつかえるの!?」
「ば、バサラ?こ、この炎はその」
「あ、じゃ、じゃなくてっ!ナマエさん、猿と友達って言ってたよね?たしか、俺に話してくれたよね?」
「う、うん」
「その猿って、人間のことじゃないよね?」

その言葉に私はお前はなにをいってるんだ?という顔をしたはずなのだが、慶次はいたって真面目だった。とても真面目な顔をしていた。多分今日はエイプリルフールじゃないし、つーか戦国時代?にエイプリルフールは無いはずだ。そして慶次が私をおちょくる意味もない。

「猿は、猿だ。人間じゃない」

自信満々に、しかしその剣幕におずおずと。そう答えた私に慶次はへにょりと眉を下げた。私もそんな気分だった。




ニアリーイコール

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