5


卵は日に日にたくさん動くようになってきていた。僕のベッドのうえでつねにゆらゆらと左右に動いたり、ちょっとだけ上に跳び跳ねたりする卵をみて僕はとてもどきどきしていた。僕が眠ってるときに孵化してしまったり、ごはんをたべてるときに孵化してしまったり……そんなことを考えると夜もあまり眠れなかった。

だから、ベッドの上に座って卵を見つめる。ついさっき、びよよんと効果音がついてもいいんじゃないかってぐらい上にとびはねた卵はいまはおとなしく左右に揺れている。まるでメトロノームみたい、みてると瞼がゆっくり落ちて来る。うつらうつらとしてたらいきなり部屋のドアがこんこんとたたかれて、僕はさっきのたまごみたいにぴょんと上に飛び上がった。

「なぁに?おかあさん?」
「やぁナマエくん、失礼するよ……ちゃんとねてるかい?」
「ちぇれんさん!」
「その様子だと寝てないみたいだね」

ジムの仕事もあらかた終わったし、ちょっと寄ってみたんだと言ってチェレンさんは僕の部屋のなかに入ってきた。その後ろでお母さんがよろしくおねがいしますと言っているのを僕は眠くてぼんやりした頭で聞いていた。

「少し寝た方がいいよ、ナマエくん」
「でも……ぼくがねてるあいだに……うまれちゃったら…………」
「そのときは僕が起こしてあげる。ちゃんと見ててあげるから、ほら、寝なさい」
「………うん」

チェレンさんに頭を軽くつつかれて、ぽすんと体がベッドの上に倒れる。そしたらぶわーって、一気に眠くなってきた。閉じる瞼、薄れる意識。あいつみたいに、こうなるんじゃないかとおもってたんだと言うのを、僕は深い眠りにつく前に聞いていた。


prev 

[back]