佐助成り代わり25


それを毎日やられれば、嫌でも体制がつく。体を密着させられて、何かを呑み込まされるのにも慣れた。どうも師匠はそうして私の何かを探っているらしい。する、と背中をなでられて息をのむ。ざわりと闇が揺れる。

「………っ」
「……ん、今日はこれで終わりだ」

私が身じろいだことで撫でるのを止め、ふぅ、と溜息をついた師匠の頬は、ここ二日間ぐらいで微妙にこけた。多分この意味不明な行為が原因だと思う。私に何かを分けてくれてるから、師匠が疲れてる。食べないと駄目なんだろうなぁとは思うんだけど、今一その気が出ない。でも、前よりは平気になった。

「水だけは飲めよ」
「………はい」

のろのろと布団にもぐりこんだ師匠が水が入った徳利を指さす。命令通りにその隣に置いてある小さな杯に少し水をついで、ゆっくり飲む。喉が拒絶しようとするのを押さえこんで胃の中に入れる。ちょっとお腹が冷たくなるのが不思議な気分だった。酒の時は冷たいのに熱くなったから?うん?止めよう。

「っぐ、……」
「さすけ」

中身を吐きだそうとぐる、と鳴った喉を押さえてうずくまると師匠が私を呼んだ。じゅわ、と口のなかに溢れて来た涎を飲みこみながら吐き気を耐えて傍に行く。半目の師匠に手を取られて、その熱さに驚いた。いや、私のてが冷たいのか。

「寝ろ」
「はい」

横に敷いてある私の布団にもぞもぞ潜り込む。最近こんな生活が続いている。師匠に何かを貰って、口の中で擦れないからぎりぎり大丈夫な水だけを飲んで、それでも酒を連想して吐きそうになって、眠れと言われる。なんだろうこの不思議な感じ。

「………」

布団の中でくるりと丸まるとなんだか安心する。ぱちりとスイッチを切られたように一気に眠気が襲ってきて、何も考えずに眠る。夢は見ない。見ないふりをしている。

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