「新八ィ」
「あれっ早起きだね神楽ちゃん。大丈夫(世界に異変か)?」
「銀ちゃんが昨日の夜、全然起きてこなかったネ……」
「え。どういうこと」
「いつも夜中におしっこしてたネ。でも昨日は行かなかったアル」
「ちょ、それ……銀さん、銀さん! 聞こえます? 銀さん……って神楽ちゃん救急車! 意識ないよコレェェエ!」



「熱中症ですね。あなたたちは大丈夫ですか」
「僕たちは普通に飲んで食ってましたんで大丈夫です」
「コイツは布団から出ようとしなかったアル。頭から被ってたアル」
「エアコンの設定温度は?」
「んだとオォォ貧乏人舐めんなよエアコンなんか地球きてファミレスでしか見たことないネ! 金持ちだからって見下してんじゃねーぞゴルァァア!」
「神楽ちゃん落ち着いて。すいませんエアコンありません。扇風機が一個あるだけです」
「……患者さんの部屋ですが、窓は?」
「開けましたけど直射日光浴びるんでイマイチ」
「……」
「……」
「坂田銀時さんですね。病室空いてるんで、入院しましょうか」
「えっホントですか!? ありがとうございます、よろしくお願いします」
「?」
「?」



「今年は熱中症の入院患者さん多くてね。付き添いの方は場所がないんで、ご遠慮いただけますか」
「じゃあ後で着替えとか小物とか持ってきますんでその時ちらっと顔だけ見てもいいですか」
「そんくらいならいいですよーあなたたちも水分補給を忘れずに」
「はい、ありがとうございます」



(どっかで聞いた声だな)
(新入りも熱中症か)
(軟弱な……って他人のこた言えねえな、今年は)
(二度目って情けなさすぎる)
(何が悪かったんだ。水は飲んでたしデスクワークんときはコーヒーも飲んでたし、結構水分摂ってたはずだが)
(近藤さん、心配してっだろうな……つうか仕事はどうなってんだ)
(山崎の奴気が利かねえな鉄でも寄越せってんだ)
(隣の奴だって着替え持ってくるついでに顔見るって言ってたし)
(鉄に指示するくらいこっちも構わねえだろ)
(風呂入りてえな……いけねえ、我慢だ我慢)
(はあ……ヒマだな)
(野郎なにして……いかんいかん考えちゃダメだ)
(忘れろ俺、全部夢かなんかで万事屋なんてモンもこの世にはないんだ)
(……はあ、)

「えーと、坂田銀時さん。関係者の確認は済んでる? じゃあ点滴用意。うん、それでいいよ。カテーテルもね」

(おいおいおい)
(架空の人物の点滴きたぞ)
(どっかよそ行け。さっさと終わらせて帰れ)

「意識ないからね、こまめに回ってください」
「はい」
「他の症状出たらすぐ知らせて」
「はい」

(おい、)
(意識がない、だと……?)
(熱中症の入院患者さんが多く、って)
(万事屋も熱中症なのか)
(さっきのはメガネのガキか、道理で聞き覚えがあるはずだ)
(ガキどもはピンピンしてんのになんで万事屋が……)
(いや、知らん。万事屋なんて奴は知らん。坂田銀時も知らん……俺は知らん)
(隣に居んのか)
(しばらく、隣に)
(……)
(ベッド、代えてくんねえかな)



「あのー、他の部屋空いてませんか」
「土方十四郎さんですね。空いてません」
「でも隣の人すんなり入ってきましたよね」
「? そうですが今は空きがありません」
「じゃあ退院させてください」
「それは先生とご相談ください」
「ちゃんと水飲むんで。今回はうっかりなんで」
「水分補給は水やジュースじゃダメです。体液のphが……」
「えっ水ダメなんですか。缶コーヒーは?」
「カフェインは利尿作用がありますから飲んでも出てくだけですね」
「甘ったるい飲料とか勘弁なんですけど」
「胃の粘膜も傷めてましたよね土方さん」
「……まあ、」
「その辺の指導もありますから、退院は先生とご相談ください」
「……」

(医者と話して万事屋が目ェ覚ます前にさっさと出て行こう)
(このまんまここにいる方が体に悪いわ)
(やっぱり腐れ天パはアホだな、はは、ははは……)
(……)
(テメェこそ、出てけよ)
(俺に近寄んな)



「ひじ、かた」



(!)



「……かた、」



(な、ん……)
(聞き間違いか? そうだ、そうだよな)
(いや、またヤってる夢見てたら)
(クソっ、治まれ震え)
(ダメだ体が震えて)
(怖ええ……)


「ひゅうっ、ひゅ……こほっ」


(おいっ!? 息が止ま、)
(し、静まり返っちまっ)
(声、かけねえと)
(出ねえッ、体が、動かね)
(そうだっナースコール……!)


「はい、どうしました?」
「と、なりの、ひとがッ」


 バタバタバタ、ガラガラガラ、


(ど、どうなっちまうんだあいつは!? 助かるのか!? 死なねえよな!)





 ――俺が気にするこっちゃねえな。バッカみてえ




次へ
目次TOPへ
TOPへ

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -