姉上、挨拶が遅れてすいません。旧盆くらいゆっくりさせてくれればいいと思いやせん? アノヤローほんと鬼でさァ。
 今年のお江戸は暑くていけねーや。姉上は帰って来ねえほうがいいですぜ。そっちのほうが涼しくて快適だと思いまさぁ。僕……俺は姉上とは行き先が違うし、多分俺のほうは熱いだろうしねィ。当分現世にいることにしやす。


 暑いといやぁ、アノヤローここんとこエライ長っ風呂でね。迷惑なんです。野郎は幹部だから一人風呂なんですが、幹部は野郎の他にもたくさんいるってーのに占領しやがんでさ。俺は気にせず大風呂行きやすけど、近藤さんや終兄さんなんかは、隊士のほうが遠慮してねィ。結局野郎の長っ風呂のツケは隊士に回るんで、近藤さんが困ってまさぁ。俺はちゃんとハッキリ言いやしたぜ。さっさと上がれよ腐れ副長って。JKかっての。キモイわ。
 怒ってましたけど、シラネ。

 まあそんな訳で、俺たちは元気です。







 総悟に嫌味言われるまで、自覚はなかった。風呂が長すぎる、と。
 言われてみて、改めて自分が風呂ン中で何をしてるんだと考えてみた。そして――ゾッとした。
 俺は女じゃない。何も気にすることはない。あれから何も、何も変わっていないつもりでいたというのに。
 ダメだ。もっと気を引き締めないと。稽古してもしても足りた気がしない。仕事をしてもしても足りない。
 もっとやらなければ。気を緩めてはならない。俺は真選組の副長だ。

 私情はいらない。






「旦那いるかィ。団子買ってきてやったぜィ」
「キャホーイ! お前こういうときはいい奴アルな」
「神楽ちゃん、いい人基準考え直したほうがいいよ。ありがとうございます、銀さんこないだから寝込んでて……」
「おや珍しい。どこが悪いんでィ(頭かな)」
「よくわかんないんです。日がな一日布団に包まってて顔も見せません」
「それ、死んでね?」
「ちょっとォオオ!? なにサラッと縁起でもねえこと言ってくれてんの!? 一応生きてますよ!」
「おしっこ行くネ。たまに」
「おめーはションベンの音聞いてんじゃねーよ……ま、干からびちゃいなそうだが気ィつけな」
「ちょっと声かけてみます――銀さん、沖田さんがお団子持ってきてくれましたよ。起きられます?」
「……」
「この通り。無視です」
「私のときは布団から手ぇ出してバイバイするヨ。メガネの声は届かないアルか」
「なにメガネの声って。メガネ喋んないからね神楽ちゃん」
「ふうん……ちょっと上がっていくけどいいよな、悪いはずナイよな? 当然だよなァ」
「……はあ。ま、どうぞ」





「旦那、ちょっとお邪魔しやすぜ」
「……」
「姉上の墓参りしてくれたの、旦那ですよね」
「……」
「線香をね、俺の前に上げてくだすった方がいるようなんで。心当たりは旦那しかいねえや」
「……」
「ありがとうごぜえやした。ほんの気持ちですが、お納めくだせぇ。もう食われてるようですがね」
「……」
「でもね、前にも言ったように思いやすが、先に進んでくだせえ。姉上はもう何にも考えられねえんです」
「……」
「未来のねえ人に、俺たちが狼狽えたって何にもならねえや。不義理でもなんでもありやせん。どうか、もう気持ちを切り替えてくだせえ」
「……」
「旦那がこんなに引きずってるたァ思いやせんでした。あん時俺が適当に友達頼んだばっかりに」
「……」
「俺のドS心が疼かねえうちに早く出てきなせえ」
「……」
「それにしてもなんでィ。このクッソ暑いのになんかの修業ですかィ。死にますぜ」
「……」
「ま、そんな訳なんで。お邪魔しやしたあ」





(ん? なんかもう一人修業してる奴がいたような……誰だっけ。ま、いいや)



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