「ドッキリは……?」


 自分が手篭めにされようというまさにその時、土方が口にしたのはそのひと言だった。
 だから俺は、ドッキリなんぞじゃねえことを証明してやった。
 あいつの、身体で。


 帯がいつの間に抜けたのか、抜いたのが俺なのか、正直よく覚えていない。初めてみる土方の裸体は、俺とだいたい同じ作りをしていて筋肉も骨格もガッシリしていた。
 それが俺の欲を唆る。
 好きな気持ちも性欲は別だと今の今まで思ってたのに、どうだこれは。
 遠慮だの配慮だの、そんな余裕はなかった。肌にかぶりつき、歯型と鬱血痕を残しながら胸と首元を舐り倒した。胸の突起は特に念入りにしゃぶった。指も使ってやった。
 それから腹に移った。割れた腹筋の筋に沿って舐めながら手のひらを這わすと、土方はびく、と身動ぎした。一度反応すると止まらないようで、ビクビク、と何度も身を捩る。女の仕草とはまるで違うのに艶めかしい。

 臍に舌を入れてゆっくり刺激しながら、初めて他人の器官に触れてみた。

「なあ土方。勃ってるけど」
「……っせぇ」

 目で見て確かめるために一旦身体を離した。土方は小さく声を上げて、身体を隠そうと無駄な足掻きをしたが、そのせいで余計に陰茎が露わになるどころか、尻の奥まで晒すことになった。いい眺めだ。

「見られてえの」
「!……ちが、見ん」
「大人しくしてりゃ半勃ちのチンコ見られるだけで済んだのに。完勃ちの上にケツ穴までまーる見え」
「!!」
「アナルセックスしたこと、ねえの」
「あ……ある、わけ……」
「まあ、俺としちゃ穴があったら突っ込むわ。ましてやそれがおめーのなら」
「ひッ」


 ゆっくり性器を擦ってやると、ハッと息を飲んだ。反応がいちいち可愛い。
 虐め甲斐があるってもんだ。
 すぐに先から透明な液体が溢れてきた。ぬめりを帯びたそれは先端の穴からプクリ、プクリと湧いてきては幹を伝って落ちていく。自分にもその機能はあるのに、土方のものだと思うだけで愛おしい。舐めてみたい。あの液体の味を知りたい。

「あ……! やめろッ、ふざけ……ぁ」

 しょっぱい。美味い。もっと欲しい。もっと出せ土方。そうだ、ここを刺激すればもっと、

「やめッ!? よろ、ず……ハッ、はぁ」

 やっぱり陰嚢はキモチイんだな、よかった。カチカチに勃ち上がった土方の物を吸い上げ、尿道口に舌を入れ、中身を吸い出そうと試みた。
 土方は声を我慢しているのか、ときどき喉を鳴らしたり小さな声をあげたりはするが、その分身体をくねらせて快感を逃そうとしてるみたいだ。そんなことしたら余計エロいのに。
 ちょっと痛い思いをさせたほうがいいよな。うん。この我儘モテ男は、自分が捨てた女や男の気持ちを慮ることができない。せめて身に危険が降りかかり得ることを教えたほうがいいと思うんだ。

「え……おい、なに……どこをっ、くあ!?」

 さすがに声が我慢できなくなったかな。ここ玄関だからローションとかないんだよな。しょうがない。外に声が聞こえちまうけどそれも仕方ない。

「よ、ろ、ずや……ぁんん、痛ぇ……それヤダ痛えよ」

 今さら甘えんな。優しくしてやる気なんか一切ねえから。テメーのカラダをズタボロにして、二度と俺に近寄ろうなんて思えねえようにしてやるんだ。だからおめーは酷い抱かれ方して当然だ。

「ああっ! 痛えッ痛あぁぁ……! 抜いて、くれ」
「……ッ」
「ま、まさか……なあ、嘘だろ、本気じゃねえ、よな? 入ら、ねってば……やめてくれ」
「……」
「むり、むりだ……無理だ! 裂ける無理だッ! よろずやぁ! あ、ああぁあぁああ!?」
「……くぅ」
「痛い! 痛い痛いイタイいたいィィィイ!! 頼むやめてくれ……うあぁあぁぁ!」
「……」
「よろずやぁ……よろ、ず、ぐあぁぁあ! 動くな、動くなぁぁぁ! いだいッいだいやめで」
「……くそ」

 あんなに勃ってたのに、土方が泣くほどに俺のものは萎えていく。土方の泣き顔は愛おしいのに、性欲は冷めていく。


「……けっ、根性もクソもねえな。白けた。帰れ」


 せめて酷い目にあったことだけは、なかったことにならないように。
 きっと今すぐ立ち上がって動けやしないとわかっているのに、急かすように立たせて追い出そうとすると、


「これも、ドッキリなのか?」


 震える声で、土方はそう言った。
 思わず顔を見ると、涙で目元はぐしゃぐしゃなのにその中の瞳は、凛として揺るぎなく俺を見つめていた。




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