2


 店の主から、いい加減退店するようにと無茶な要求をされたので、仕方なく移動中だ。次はどうすっかな。オトナ的にスッキリできるトコ行こうかな。ガキどももいねーしチャンスかも……金ないけど。
 金ないわぁ、やっぱ真面目に仕事探すか。新八誘ってコンビニバイトとか。神楽連れてくとめちゃめちゃになるからなァ。でもコンビニでバイトすると神楽の腹が多少膨れるんだよな。長谷川さんがバイトしてたコンビニ、また雇ってくんねーかな。無理かなぁ。アレって長谷川さんのせいになってるから、俺たちセーフじゃね?


――なんも変わりねえし、もう終わったことだ。俺に関係ねえ


 確か、最後にそんなこと言ってた。俺と土方の関係に変わりはない。もともと親密ではなかった。それは変わってないし、土方に俺は関係ないだろう。真選組の副長として俺のヤンチャ時代を探りたくなることはあっても、土方個人にとってはどうでもいい案件だ。俺がそうであるように。
 だって土方はつけ加えたじゃないか。


――テメェにも関係ねえはずだ。もう、やめろ


 公私を分けるったって、真選組副長と土方十四郎ってのは同一人物なんだ。不必要に近寄るなってことだろうな。お互いのためだ、と。

 まあそんなとこかな。うん。なんかスッキリしないけど。

 スッキリしないのは、俺の望む答えと違うからだろう。じゃあ俺はなにを望んでるのか。土方くんと仲良くなりたいのか。友達になりたいのか。んな訳あるか。でも、そうじゃなかったらどうしてアイツに切り離されてこんなに納得いかねーんだ。

 あ、俺のほうから言い出した結果じゃないから、とか?
 イヤイヤ、どんだけワガママさんよ俺。それほどお子さまじゃないわ。大人の対応するわ。向こうが嫌がってるものを無理に押せ押せで仲良くなろうとなんぞしないわ。迷惑だろ、そんくらいわかるわ。ていうかアイツ今まで嫌がってる素振りなんかした? 俺に揶揄われて何気にノリノリで反撃してきたよね。嫌がってたの? マジで?


 えっ、じゃあ俺イタイ人だったってこと? そうなの!?


 ああ、初めてじゃねーしなイタイ人やっちゃったの、でもうわぁ多串くんにはそうでもねえと思ってたわ。それよりアイツにイタイことしてんのに指摘もされずに放置されて、とうとうヤツの我慢にも限度が来たってことなの。
 うわぁ……カッコ悪い。その事実もそうだけど、アイツにカッコ悪いと思われるのがいたたまれねえ。そんならもう少し傷の浅い段階で指摘しろよ。

 
 常日頃アイツを意味なく上から目線で揶揄って遊んでた。土方は実は俺と話したいと思ってるなんて勘違いまでした。それが、実は土方にとっては、馬鹿丸出しの行動で。その馬鹿丸出しな男が土方のたった一度や二度の失敗をネタに飯タカろうとしたり飲みに連れ出したりって……、


「うわあぁぁぁ! どうすりゃいいんだ俺、恥ずかしくて死ぬ」
「死ぬ前にツケ払ってくれよ銀さん」
「ツケどころじゃねえっつの! 人生最大のピンチなんだけど! 俺という人間の尊厳がだな、」



「へえ。テメェにそんな大層な尊厳があるたァ思わなかった」



「えっ、」



「公道で喚くほど恥じ入ってンなら心意気だけは褒めてやるが、迷惑条例違反だ。今すぐ奇声を発するのをやめろ」

「おま、」

「ンだ、理解できなかったのか。うるせェから黙れっつってんだ。人の迷惑だろうが」

「うわあぁぁぁぁぁ!?」
「あっ、銀さん代金! ったくまた逃げられたよ……次はないからな!」
「食い逃げか?」
「いえ、ただツケが溜まってるだけで。真選組のお世話になるほどじゃありませんで」
「……そうか」


 なーんて会話があったことを、俺は後で親父さんから聞いた。ダッシュで食い逃げはさすがにマズイと思って、その後コンビニでバイトした分から出せるだけツケを減らしに行ったら、そのとき親父が頼みもしねえのに教えてくれた。

 これで俺のクイズ解きは振り出しに戻った。
 土方は俺を徹底的に避けるつもりでもないらしい。
 じゃあなんだ。もう一度考える必要がある。


 不思議なことに、もう一度同じことを考えるってのに、俺は全然苦痛と思わなかった。むしろ、今度こそ正解を見つけてやろうとワクワクした。
 今度こそ多串くんにぐうの音も出させない答えを、突きつけてやるから。銀さん甘く見るなよ。

 けど団子屋の親父のせいで、俺のツケが多串くんにバレちまったからな。もう少し金稼いでからにするか。



次へ
目次TOPへ
TOPへ

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -