6 「わかりきったことだった」 *尿道バイブつづき。 「オメーさ、女に生まれたらよかったのに」 「ろっれ……、ろれ、くらはい……、」 「男誘うカラダしてよぉ、淫乱で? ぜってー女に生まれたほうが幸せだったって」 「ひィーーーッ!? も、らめ、やらぁアアァア!!」 「そしたら、俺も惚れてやったのに」 鳴いて、泣いて、声が枯れるまで、 俺は土方を苛んだ。 回らない舌で懇願するのを心地よく聞きながら、尿道を抜き差しし、バイブの先が土方の陰茎を行き来するのを、飽きずに眺めた。 土方は泣いた。 嗚咽で息が詰まるまで泣いた。 苦しめば苦しむほど、責め苦から逃れようと背を反らせば反らすほど、土方は俺の肩に髪を擦り付けてきた。 閉じられない唇からはだらだらと涎が垂れ続け、その艶に毒された俺は何度も唇でそれを拭った。ときには舌を差し込んで。 瞬きも覚束なくなったせいで、涙も垂れ流しになった。それさえ惜しくて、舌で舐め取った。 次第に土方の喉からは、ひゅうひゅうと笛のような音しか聞こえなくなった。 「ひじかた、」 「はーーッ、ヒーーっ」 「ひじかた」 「ハーーッ、ァーーー!!」 「綺麗だ」 自分が何を言ったのか、理解していなかった。 「挿れてえ。他の男にびろびろにされたテメーのケツマンコ、治るまで舐めてやりてえ」 「ヒーーッ、はーー、」 「ほんとはこの穴、」 「!! イィイィィィイィ!!!?」 「テメーのちんぽ裏返して舐め回してえ」 「ーーーッ!! 〜〜〜っ、」 「ひじかた、」 まともな意識もほとんどないだろう身体を、思いきり抱き締めた。 「俺が惚れたら、壊れちまう……」 わかりきったことだった。 高杉と戯れに抱き合っていたころから。 敵どころか、味方まで抱き潰して捨てたころから。 異常な性癖と、執着が、周りを壊してしまうのだと。 夜兎の娘が言った通りだ。 力を制御できない者は、たとえ愛をもって抱いても、相手を壊してしまうのだ。 あの娘はウサギを、 俺はヒトを、 壊す種族が違うだけ。 だから愛さない。高杉だって惚れてたわけじゃない。 「ひじかた、」 もう聞こえていないだろう耳に、囁く。 「好きに、なりたかった」 夜叉であらねば、ヒトの世界に混じれない。 夜叉である限り、誰にも関心を持たずにいる限り、 俺はヒトの世界にいられる。 おまえと同じ空気の中にいられる。 だから、俺はおまえを愛さない。 ずっとそうだった。 遠目に見る凛々しい姿も、 黒い隊服に包んだ潔癖な心根も、 真っ直ぐ伸びた長身も、 俺は嫌い続けることで、おまえと空間を共有したかった。 続かないと知りながら、 できる限りそれが長く続くように。 どくっ、と土方の身体が跳ねた。 土方はそれっきり、動かなくなった。 その身体を、ずっと抱き締めていた。 章一覧へ TOPへ |