「わかりきったことだった」
尿道バイブつづき。





「オメーさ、女に生まれたらよかったのに」
「ろっれ……、ろれ、くらはい……、」
「男誘うカラダしてよぉ、淫乱で? ぜってー女に生まれたほうが幸せだったって」
「ひィーーーッ!? も、らめ、やらぁアアァア!!」
「そしたら、俺も惚れてやったのに」



 鳴いて、泣いて、声が枯れるまで、
 俺は土方を苛んだ。
 回らない舌で懇願するのを心地よく聞きながら、尿道を抜き差しし、バイブの先が土方の陰茎を行き来するのを、飽きずに眺めた。

 土方は泣いた。
 嗚咽で息が詰まるまで泣いた。
 苦しめば苦しむほど、責め苦から逃れようと背を反らせば反らすほど、土方は俺の肩に髪を擦り付けてきた。
 閉じられない唇からはだらだらと涎が垂れ続け、その艶に毒された俺は何度も唇でそれを拭った。ときには舌を差し込んで。
 瞬きも覚束なくなったせいで、涙も垂れ流しになった。それさえ惜しくて、舌で舐め取った。

 次第に土方の喉からは、ひゅうひゅうと笛のような音しか聞こえなくなった。


「ひじかた、」
「はーーッ、ヒーーっ」
「ひじかた」
「ハーーッ、ァーーー!!」
「綺麗だ」


 自分が何を言ったのか、理解していなかった。


「挿れてえ。他の男にびろびろにされたテメーのケツマンコ、治るまで舐めてやりてえ」
「ヒーーッ、はーー、」
「ほんとはこの穴、」
「!! イィイィィィイィ!!!?」
「テメーのちんぽ裏返して舐め回してえ」
「ーーーッ!! 〜〜〜っ、」
「ひじかた、」


 まともな意識もほとんどないだろう身体を、思いきり抱き締めた。


「俺が惚れたら、壊れちまう……」


 わかりきったことだった。


 高杉と戯れに抱き合っていたころから。
 敵どころか、味方まで抱き潰して捨てたころから。
 異常な性癖と、執着が、周りを壊してしまうのだと。

 夜兎の娘が言った通りだ。
 力を制御できない者は、たとえ愛をもって抱いても、相手を壊してしまうのだ。

 あの娘はウサギを、

 俺はヒトを、

 壊す種族が違うだけ。
 だから愛さない。高杉だって惚れてたわけじゃない。

「ひじかた、」

 もう聞こえていないだろう耳に、囁く。


「好きに、なりたかった」



 夜叉であらねば、ヒトの世界に混じれない。
 夜叉である限り、誰にも関心を持たずにいる限り、

 俺はヒトの世界にいられる。
 おまえと同じ空気の中にいられる。


 だから、俺はおまえを愛さない。
 ずっとそうだった。

 遠目に見る凛々しい姿も、
 黒い隊服に包んだ潔癖な心根も、
 真っ直ぐ伸びた長身も、

 俺は嫌い続けることで、おまえと空間を共有したかった。

 続かないと知りながら、

 できる限りそれが長く続くように。




 どくっ、と土方の身体が跳ねた。

 土方はそれっきり、動かなくなった。



その身体を、ずっと抱き締めていた。




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