4 「浣腸させていい? ここで」 ※ビッチ土方と酷い坂田の再会 土方が、復帰したらしい。 町の噂に聞いただけだけれど。 ジミーに振られてしばらく、塞いだ気分が抜けなかった。 とは言っても、俺は本当にジミーに惚れてた訳じゃないのもわかってた。 お互い飽きるまで、しばらく一緒にいようと思った、その程度。 もちろんそうやって始まった関係が、後に深く繋がっていくことになるかもしれない。でも、あいつはそれを望まなかった。 軽い気持ちではなかったと思ってる。 土方の直属だ、立場が悪くなったら庇う覚悟くらいはしてた。 けど、それは要らないと言われた。 面白くないんだと気づいたときには、もうずいぶん時間が経っていた。 要するに、俺はジミーのために覚悟をしたんじゃなくて、俺が後で面倒に巻き込まれたとき、ここまではちゃんとやったんだと主張できる、いわばアリバイがほしかっただけなのだ。 そこまでしたのに、ジミーはそれを無碍にして、俺から離れていった。寄り添ってきたのは、あいつなのに。 それが面白くないだけだった。 土方とは相変わらずなにもない。 あのとき、なぜ俺はもうやめようと思ったのか。 それすら忘れてしまった。 土方は、俺を嫌ってた。憎んでいるかもしれない。 山崎の奴、沖田に有らぬことを吹き込まれて土方が俺を好きだとか言ってた。 ああ、それも不愉快な原因のひとつだ。 沖田がありもしないことをまことしやかに言い触らそうとして、土方に本気で斬り掛かられたって言うじゃないか。 それだけ、俺はあの男に憎まれてるということだ。 それが苦しい訳じゃない。そんなこと、あるはずがない。 ただ、その日その場所で、苛ついたのは確かだった。 久しぶりに女でも買うかと、その界隈に足を向けた。 この辺はうっかりすると、男を買わされるから要注意、なんぞと自嘲していたときだった。 ――ははぁ、ホテル代ケチリやがったか。 路地裏で、明らかに性交渉の最中の、人の息づかいが聞こえた。 ところ構わず盛ってんじゃねえ、とどっかで聞いた言葉を思い起こしながらそっと覗くと、 なんと四人いた。 三人でひとりを犯している。 一人は口淫を強いつつ乳首を乱暴に抓り、二人目は挿入して腰を振り、もう一人は股間と、もう片方の乳首を交互に舐っていた。 犯される人間の白い脚が力なく宙に揺れる。 男か。 ヤられてる奴も男だと、その脚でわかった。少ないけれどうっすら毛に覆われていたから。 ならば余計なことに口を挟むまい、とそっとその場を離れようとしたとき。 腰を振っていた男が低く呻いた。仲間が変われと催促し、男は離れた。同時に口淫させていた男も逐情し、どろりと精液を、男の顔にぶちまけた。 それで、嬲られていた男の顔が見えた。 新しい男根を躯の中に迎えて、土方は声を上げた。 今度は二人に口淫を命じられ、積極的に男のモノにしゃぶりついていく。もう一人のほうには懸命に手で奉仕し、それを代わる代わる、舌を伸ばして愛撫していた。 だが下から突き上げられるたびに口淫が上手くいかなくなってきて、不満がった男たちは喉奥まで突いて苦しむ様を喜んだり、陰嚢を握って苦悶の悲鳴をあげるのを笑ったりし始めた。 「あのさぁ。それ、俺んなんだけど」 気がついたらそう言っていた。 挿入したまま、男はニヤッと笑って、帰んな坊や、と言った。 「それとも、混ざるか?」 「イヤだから、その肉便器俺んなんだって。勝手に使わないでくんね」 「はは、こいつから頼んできたんだぜ? 何人でもいいからシてくれって」 「……」 「今日だけじゃねえ、ここんとこずっとだ。タダでヤれる上になんでもしていいっていうからよ。ここらじゃ愛用してんのよ」 「……なんでも?」 「複数プレイもスカトロも、青姦も縛るのも叩くのも、何でもありってこと。兄ちゃんもヤるかい?」 「そっか……悪いね、続けて? 終わったら連れて帰っからさ」 土方の能面のような顔がぴく、と動いた。 それを見届けて、俺はグループのリーダーらしき男に、笑って告げた。 「最後に、浣腸させていい? ここで」 土方が蒼白になるのを見て、久々に心が晴れる思いだった。 章一覧へ TOPへ |