ホワイトデー・マジック


「……ぴー、ほわ……」
「ん? どしたの十四、じゃねえや土方? つか、別にもういつでもどこでも十四郎でよくね? みんな知ってるしよくね?」
「イヤだ! んなこっ恥ずかしい呼び方しやがったらブッ殺す!」
「そーいうときはデケェ声出るのになぁ。で、なあに?」
「あのなッ! はっ…………でー」
「ん?」
「なっ、なんでもねえっ」


ダッ………!



「オイいいのか、銀時」
「うーん。よくないけど。よくねーけどさぁ、何かあんな初心だと、こう……罪悪感しかわかねえんだもの」
「そうだよなぁ、これまで俺や万斉と女コマしてブイブイ」
「ちょっと、人聞きの悪いコト言わないでくれる。土方が聞いたら大変なことになるからね。大変なことになるからね」
「またキスの真似してやろうか」
「ノーーサンキューーッ!? 土方以外だとすっげ気色悪ィってハッキリわかったわ! マジやめて!」





「さ、坂田。待たせた」
「おう。部活どうだった」
「近藤さんがまた志村姉にブチのめされてた……」
「ああそう。気の毒に」
「……あの、」
「ん?」
「今日! ウチ、親がっ、いいいいねーんだ!?」
「……」
「さ、ささ、坂田呼ぶって言ってあるし!? あの、」
「!?」
「よかったら、」
「……!」
「じゃねえ。来て、欲し」
「おま、」
「ホワイトデーだろ、」
「……」
「先月は、何もできなかったから……今度こそ、アレ」


「とうしろ。すっごく嬉しい」
「……!?」
「俺が泊まりに行ったら、どうなっちまうかわかってるよね」
「ああ、当たり前だろ……」
「ね、先月ケンカみたいになっただろ。あれから俺も頑張ったわけよ」
「?」
「あのな。好き。土方のこと。ほんと好き」
「……お、おう」
「だから中途半端だと辛い。俺はな。けどお前は違うだろ」
「……」
「最後までヤっちゃうの、怖くねえの? もう平気?」
「おー……」
「こうやってさ。ガッコとか、人目のあるとこでこっそり手ェ繋いだりは平気なの。俺。オープンスペースでたまたま人がいないときにキスすんのもハグすんのも、おめーは恥ずかしがるけど俺は好きなの」
「……」
「けど、二人っきりになったら俺、止まらねーよ。今度こそ、止めらんねえよ? そんでも大丈夫?」
「……」
「つうかさ、おめーンとこの親って夜勤多いのに、なんで今日に限って? イベントデーとか気にしねえだろ、おまえ」
「……気にしねえ」
「だろ、だったら気持ちの整理がつくまで」
「俺だって……! その、」
「ん?」
「俺だって、ぎ、銀時に、触りたい」
「うん。いいよ。誰もいねっし手ェ繋ご」
「わあ、あったけえなお前の手……じゃなくて、」
「じゃキス」
「んんっ……待て、ちょっ、」
「ねえ土方。そんな蕩けた顔してんの、銀さん的にはめっさ嬉しいけどさぁ、」
「んぅ……」



「どう考えても、誰かが考えたシナリオだよなぁ?」



「げっ……、」
「だいたいわかるけど、言ってみろ。誰だ」
「――総悟」
「ですよねー!? いい加減学習してくんねーかな土方くん!? 沖田の言うことは半分以上ウソ! キミに関しては99.999999%ウソだから!」
「そんなこたァねえ! 確かに憎たらしいヤツだけどアイツだっていいところあんだぞ! 今回だって、相談に乗ってくれて!」
「そんでおめーは口車に乗ったんだな」
「ちげーぞ! 俺は、おれはな、おまえと、あの、アレ、せっ……」
「うおぃイィィ!? あんのドS俺の土方に何教えてくれちゃってんの!? 土方もメッ! そういうことは銀さんが全部教えてあげるから! 他人に聞かないこと! わかった!?」


「じゃあ、教えてくれよ」


「……!?」


「今晩、俺の部屋で」


「!」


「じゃ、俺先帰って片づけとかしてるから……ぜってー来いよ!」



ダッ………!



(沖田恐るべしィィィ!? あんな口説き文句教えちゃダメだろオォォ!? ダメだ、もうダメだよ銀さんんんん! お泊まり行っちゃうもんねー!)



「ベタだなァ」
「ベタにしないと土方が覚えられんのでござるよ。悶絶死寸前で」
「旦那も意外とピュアだねィ」
「テメェは……ま、銀時サイドの感想は流してやるぜ」
「イヤだな、俺ァ土方をイジメ抜くためにやってンでぃ。旦那の惚気なんぞ聞きたかねェや」
「ふーん」
「まあそういうことにするでござるよ、晋助」




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