泣いて笑って 「犯人は全員捕縛の上収監、死者ゼロ、負傷者三名、うち一名は意識不明の重傷です」 「うちの側か。救急車は」 「すでに大江戸病院に搬送済みです」 「どこやられた」 「頭を……隊士を庇って、」 「他の二名は」 「パトカーで同じく大江戸病院に掛かりましたが、処置が終わったら屯所に帰れるとのことで」 「他にないな? 現場は保持。二番隊だけ残して撤収」 「土方副長ッ、重傷者は」 「自己責任だ。あいつが自分でやったんだから、仕方ねえ」 「でも、坂田副長は……新人隊士を」 「助かった奴はこれから精出して働け。以上」 「副長!」 「副長……旦那のお見舞い行かなくていいんですか」 「あ? それどこじゃねえよ、あいつがいねえから昔の忙しさに逆戻りだ」 「そうでもないんじゃないですか。今日みたいのは旦那が報告書作るわけじゃないし」 「誰かが書かにゃならねえだろうが。くだんねえこと言うなら退がれ、こっちゃ忙し……」 「こないだ土方副長が寝込んだときは、旦那が付きっ切りで看病したのに」 「……」 「副長の仕事全部肩代わりして、それから看病するんだって。しょうがねえなぁとか口では言ってましたけどね。お粥も旦那が作ったんですよ」 「……頼んでねーし」 「そういうこと言います!? 旦那ったら副長が治るまですっごい顔色悪くて、ご飯もろくに食べないから軽食差し入れたのに『十四郎が治ったら一緒に食べるから』とか言って!」 「あのバカ、仕事に差し支えるだろうが」 「酷っ! ちゃんと仕事もしたでしょう、副長がいちばんわかってるはずです!」 「……」 「ちょっと顔くらい見に行ってあげたらいいじゃないですか、半日も掛かかんないのに」 「……っせーな」 「副長!」 「行ったら半日どころか……二日でも三日でも、目が覚めるまでいたくなんだろ」 「副長……」 「それじゃ仕事回んねえから……あいつが帰ってくるまでは、俺がやっとく」 「……大丈夫ですか」 「もともと俺だけでやってたんだ。たいしたこっちゃねえ。それより」 「なんです」 「銀時が庇った隊士、フォローしとけ。気に病むなって伝えろ」 「ご自分で言えばいいじゃないですか」 「……俺は、ぶん殴りそうだから」 「!」 「代わりに、言っとけ」 「……でも、もし」 「ふん。死にゃしねえ」 「……」 「銀時は死なねえから。俺より先に死なねえって、言っ、」 「副長」 「……ッ! もういいからッ、出てけ!」 プルルルル、プルルルル、 「これ、病院の番号……」 「もしもしッ」 『あー俺おれ。十四郎?』 「……ぎんとき!?」 『目ェ覚めたから。ごめんな、びっくりしたかなと思って』 「……ッ、アホ」 『あったまガンガンすっけどまあ大丈夫だろ。明日ならデスクワークくれえできっからよ、病院持っ』 「アホかァァア! さっさと寝ろ! 怪我人に手伝わせなくたって何とかなるわボケェェエ!」 『―――うっへえ、頭キーンてなった。もうダメ、死ぬ』 「! ぎんとき……?」 『やべえ医者に見つかった。じゃあな、仕事し過ぎんなよ』 「わかったから早くベッド戻れ! しばらく大人しく寝てろ」 『へいへーい。あ、それと』 「?」 『帰ったら泣くまで抱くから』 「……!」 『快気祝いな。覚悟してろよ』 「……ぅ、う、」 『じゃあな十四郎、愛してる』 プツッ、プー、プー、プー、 「ばかやろ……ぐすっ、どんだけ心配したと、おもっ……そんなプレイ、うれじぐねっ……ううっ」 そろーり、こっそり (見なかったことにしときますね、副長) 前へ/次へ 目次TOPへ |