03


伏見に抱えられるというなんとも屈辱的な体勢のまま、私たちは医務室の前まで来た。

突然、伏見が医務室の扉をガンガンと足で蹴りはじめる。

「ちょっと伏見!何して…」
「あんた抱えてるから手が使えないんだよ。ノックの代わりだ」
「がさつ!!乱暴者!!」
「やっぱり返事はない…か。おい瀬尾、扉はお前が開けろ」
「鍵かかってるに決まってるじゃないですか」
「いいからやれ」

一体何様のつもりだこのイヤメガネ。
そう言いたいのをぐっと堪えて、私はドアノブに手をかけた。

すると、意外にもあっさりとドアノブは回り、扉は開いてしまったのだ。

「なんて無用心な……」
「そんなもんだろ。入るぞ」

そう言って中に入ると、伏見は私をベッドの上にそっと座らせた。

もっと乱暴に、それこそ落とされるくらいのことは覚悟して構えていた私だが、伏見の意外な行動に思わず拍子抜けしてしまった。

「なに間抜け面晒してんだよ」
「いや…てっきりもっと乱暴に扱われるかと思ったから驚いて……」
「何、そういうのが好みなわけ?」

伏見が私をからかうようにニヤけながらそう言うので、私はぶんぶんと激しく首を横に振った。

伏見はそんな私を見てまた満足そうな顔をすると、すぐに辺りをキョロキョロと見回し始める。

「へぇ…必要なものは揃ってるみたいだな」
「伏見…さん?」

「とりあえず瀬尾、脱げよ」

その言葉に、私は驚いて顔を真っ赤にした後、その場から逃げようとした。
けれど背中に強烈な痛みが走り、すぐにベッドの上でうずくまることになる。

「……何してんのお前」
「ぬぬぬ、脱げとか、何言ってんですかあんたはぁぁぁぁ!!!」

ヘンタイ、ケダモノ!と叫ぶ私を見て、伏見は愉快そうにクスクスと笑い出す。

「別にそういう意味で言ったんじゃないんだけど。何勘違いしてんの」
「だ、だって…!」
「誰もいないから代わりに俺が診てやるっつってんの。誰もお前の体なんかに欲情しねーよ」

伏見の言葉に私は涙目になる。いくらなんでもそこまで言わなくたって……。

「っつーかさ、瀬尾、お前もしかして処女?」
「なッ、しッ、しょッ…!?デ、デリカシーがないにもほどがあんでしょ!!??」
「なるほどビンゴね。まぁそんな感じだわな」

人の話を聞くということができないのかこのイヤメガネは!!

私が羞恥で顔を真っ赤に染め涙目になっていると、伏見はクスリと小さく笑った。

「悪い、からかいすぎた。まぁ別に変なことするつもりはなし、下着も脱がなくていいから、とりあえず制服脱いで、向こう向けって」

伏見の言葉に渋々と後ろを向いて制服を脱ごうとしたところで、私は今まですっかり忘れていたことを思い出し、ハッとなった。

「伏見…さん…、やっぱもう遅いですし、部屋に戻ってもいいですよ?私自分でなんとかするんで…」
「は?ここまで来て何言ってんだよ」
「で、ですから!私一人で大丈夫なんで!」

そうだった、すっかり忘れていた。
私はこの男に…この男にだけは自分の背中を見せてはいけないということを…。

けれど私の言葉は逆効果だったようで、伏見は不審そうな目で私を見てくる。

「何お前、俺に見られて困るもんでもあるわけ?」
「困るものしかないんです!!嫁入り前の婦女子の体はそうやすやすと男性に見せちゃだめなんです!!」
「お前今絶対一瞬脱ごうとしてたろ!嘘つくんじゃねぇ!」

伏見は舌打ちすると、後ろから私の頭を乱暴にベッドに押し付け、片腕を背中に回してねじりあげた。

「あでででで!!伏見腕!腕もげる!!」
「何か隠してるだろお前、いいから吐け」
「ないですー!私は怪我人です!暴力反対!!」
「あっそ。言うつもりはないか…。なら」

伏見はそう言うと私から一瞬手を離し、正面から私の両手首を自分の片手で押さえ付ける体勢にすると、強引に私の服を脱がせはじめた。

「変態!!」
「誰もお前の体に興味はねーよ」

あっという間に制服の上を脱がされてしまった私は、涙目になりながら伏見を睨みつけた。

一方伏見は、私の体をまじまじと見つめて一言、
「なんだよ…何もないじゃ…」
そう言いかけて、すぐに険しい表情になった。

やばい……やっぱばれたか…

「お前…これ……」
「別に……」

私は恐る恐る口を開く。

「もともと吠舞羅にいたのがあんただけじゃないって、それだけの話でしょ…」

私の絶対に見られたくなかったもの……

そう。
伏見の視線の先――私の腰のあたりには、吠舞羅の徴が刻まれていた。


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