憶



あの日は絵理香の喘息の調子が良かった気がする。
その日の前日、私はアリアに頼んで大河くんに電話していた。
新しい学校、ー中学校の制服を試しに着てみて、楽しくなって、これからの生活に期待をしながら大河くんに電話をかけた。
大河くんも楽しそうだった。他の小学校からも人が来るから、もっと友達が出来る。
大河くんは、そっちは都会か?どんな所だ!?なんていくつか質問したあと、いつか遊びに行くからな!なんて言っていた。
私はそれが嬉しくて、ありがとう、ありがとうと何度も言って、電話を切った。
事が起こったのはその次の日だった。

私は絵理香の手をひいて、アリアにこの町を廻りたい、と言った。
その時のアリアの微妙な表情は、今でも忘れられない。
私と絵理香は二人でバスに乗り、そのバスは横転し、絵理香が死に、私が生き残った。
その後の記憶が曖昧だった。
アリアはなんとなく、絵理香はエルという名前のロボットになったと話した。
私は絵理香のことをはっきりと思い出せなかった。
けれど、どうして絵理香の喘息を治さなかった、どうして事故を未然に防げなかったのかと聞いた。
アリアは決められた未来を変えると、もっと恐ろしいことになると言った。
私の世界はアリアで一杯だった。
だからアリアの言うことは絶対だし、全てだった。
だからアリアの言葉を素直に受け止めていた。
私にとって、アリアは記憶が曖昧で苦しい私をどん底から救ってくれた救世主だった。

けれど、今はどうだろうか。
記憶は大方思い出すことが出来、大河くんもいた。
今までの不安定な私から、変わることが出来ただろうか?

まさにそんなことを考えている時だった。
私の肩に誰かの手が置かれた。
大河くんかと思い振り替えると、全く知らない茶髪の男子が、不思議そうな顔をしながらこちらを見ていた。

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