おにごっこ



彼は意外とすばしっこくて。
見つけたと思ったら彼は直ぐに走り出して、鬼ごっこをすること約十分。
十分も走っていれば当然1キロは走っていました。
私は肩で息をしながら立ち上がり、田んぼ道の前で立ち止まりました。
ちなみに、零は先に見つけて先程からずっと後ろについてきていました。
彼女は元気そうでした、私と違って。
「あれ、私の体って確か18ですよね…?」
零は腕をぴょこぴょこと上下させて訴えます。
「アリア、おそーい!レイだったら大河くんつかまえられるもん!」
「え、えぇ…?」
決して私の体力がないわけではないのです、むしろ体力だけなら、人よりはあるほうでした。
(子供の体力って無尽蔵ね…)
辛いわぁ、と私は溜息を1つついたあと、零の頭を一撫でします。零は不思議そうにこちらを見るのです。
「じゃあ…零にお願い。…私も探すから、零も大河君を捕まえてきて。」
「わかった!」
大方聞いていなかったような様子で零は走り出していってしまいました。

子供っていいなぁ…
そんなことをふと考えた。人間の身体を使っていると、色々なことを思い出しました。
「それにしても…」
子供達は素直で良い。
それを羨ましく思う反面、笑ってしまうようなこともしてくれる。
「結局かくれんぼじゃなくて、おにごっこになってるのね」
日が暮れるまで、私は街を歩いていました。

結局、大河君を見つけたのは零だった。
そしてその零と大河君を見つけたのは私でした。
「大河くん見つけたのー!」
「うるせー!おまえ鬼じゃないだろー?!」
私はそんなことを言い争っている二人の背後をとって、大河君を抱きかかえました。
「捕まえたわよこの悪ガキ〜」
「あっ!お前らはかったなー!」
「別に何も謀ってないわよ…途中喫茶店行ってたし…」
「アリアおそーい!」
零が頬を膨らませてぴょこぴょこ跳ねながら抗議しました。
大河くんは私の腕の中で暴れている。
「今のなし!もう一回!もう一回だ!」
「ちょ、大河くん重いわよ…また重くなった?」
私は大河くんをゆっくりと下ろしました。すると大河くんは零を指さして叫ぶのです。
「別に重かねーよ!こいつの今の体重なんてなあ…」
「やめてよ大河くん!レイは身長も伸びてるからいーの!」
「女の子と男の子だと柔らかさが違うもんね〜」
私の呟きは二人の大きな声にかき消されてしまったようでした。
取り敢えず耳が痛くて。
「ま、帰ろっか。」
手を差し出すと、零が最初に繋ぎに来ました。
「かえるー!」
「まだ!もう一回!もう一回だ!」
「さ、流石にお母様に怒られちゃうよ…」
2人と手を繋いで家路を歩きました。

大河くんのお母様は随分と寛容な人だったのです。
いや、寛容と言うべきなのか分からないけれど、
「うちの大河なんて持って行って良いわよ〜」
なんて言っていたのです。
ちなみに零は本気にしていた。
「大河くんをレイにください!」
「零、それは多分違う意味になるかな」
お母様は笑っていました。
大河くんも零もなんだかよくわからないような顔をしていました。
私はきっと、疲れたような顔をしているだろう。
でもこんな疲れも、きっと幸せな疲れなんだろう。

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