魚



「零ちゃん、何か好きな食べ物とかある?」

あるなら今日はそれを作るから、と言われる。
けれど目の前にある食材の山を見ても何も思い浮かばなかった。
いつもは何を食べてる?と考えてみたものの、普段は菓子パン程度しかたべなかった。
アリアが一緒に何か食べるわけでもないし、むしろアリアが作ったものを無理矢理食べさせられていた。
別にパンだけでも栄養は採れる気がする。
肉だって野菜だって炭水化物だって一気に採れるわけだし。
といういいわけをして今まで生きていたからよくわからない。自炊も最初だけで、最近は殆どおざなりだった。

「え、えー…っと」

どうしよう。何か答えなくては。
とりあえず視界に飛び込んだものを答えた。

「さ、…魚が好きで、す」

嘘八百。
本当は嫌いだ。
魚だけは本当に嫌いだ。
生臭いし、たまに甘い味もするし
苦いときもあるし、どうしても食べられない。

「本当?今日はお魚も安いから買っちゃおうかしら」

ああ、忘れてた。
ここは港町なだけに、やけに魚の値段が安かった。

次々と魚をカゴに詰めていく彼女を見て、溜め息をつくしかなかった。

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