懐



暫くして、地面を蹴る音がドカドカと近付いてくるような音が聞こえた。
反射的に振り替えると、大河君が居た。
彼は一人でいて、少し肩で呼吸していた。
探していたのだろうか。

「…どうしたの?」

「へ?…何って、お前ほっとくとどっか居なくなってるだろ。
色々忘れてんじゃねーの?昼間でも裏道とか歩いて変なやつに絡まれたりなんて充分あり得るし、
迷子になるかもしんねーし危なくて一人なんかで放っておけねえよ」

…その言葉は彼の意志なのだろうか、彼の母親の意志なのだろうか。

「…じゃあ、案内してほしい。」

わざとそう言ってみる。彼は少し驚いていたけれど、すぐに首を縦に振ってくれた。
私は彼の隣より少し後ろを歩いていた。
こうして彼と町を歩くのは久々だ。
けれど、同じ光景では無かった。
彼の背中はあの頃よりもずっと成長していて、
私は今、彼を見上げている。

そして私は色んな所を案内してもらった。
最初に商店街へ行った。行きつけのコロッケ屋さんは残っていたし、あの大好きな美容室は無くなっていたけれど、駄菓子屋は残っていた。中には入らなかったけれど、軽く会釈はしておいた。
次に公園へ行き、川の近くへ行った。
暑かった。ただひたすら暑かった。
肌が焼けるのさえ感じた。
けれどその特有の暑さも、蝉の声ですら懐かしくて。
段々と細かい記憶までフラッシュバックされていくようだった。


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