「・・・・・味の保証はしないからな」
こんがり焼かれたパンにとろけるチーズとハムのサンドウィッチ、千切りされたキャベツにプチトマトのサラダ、そしてオニオンスープ。昼食としては申し分ないメニューが、女主人である奈々の不在であるにも関わらずテーブルを飾った。
「ツナ・・・・俺は夢を見ているのか?」
リボーンが驚くのも無理はない。何せ教え子の綱吉の代名詞はダメツナと言われるほど、これといった才能どころか日常生活を円滑に過ごすことすら難しいはずなのだ。それが試しに作らせた昼食がまさかこのような結果をもたらすとは思っていなかった。
「料理は出来たんだな・・・・・」
「こんなの料理のうちに入んないだろ。ハムもチーズも野菜も、包丁使わないですんでるんだから」
「このスープは?」
「コンソメの元があったから、母さんが切ってあった玉ねぎと入れただけ」
淀みない綱吉の答えに、リボーンはようやくこれが現実であることを認める。見た目だけでなく嗅覚からも食欲をそそる匂いがしていることから、愛人のような料理ではないことは確かだ。あとは自分が納得するだけの味かどうかということだけ。目の前ではチーズをあらん限りに伸ばして食べる綱吉がいた。
「・・・・うまかったぞ」
「おそまつさまでした。無言で食べるから不味かったのかと思ったよ」
こんがりやけたパンに程良くとけたチーズにハムは、空腹だったことを差し引いても十分リボーンを満足させるものだった。オニオンスープも玉ねぎによってあっさりとした味付けで、濃い味だけで口が支配されるのを見事防いでみせたほどの出来栄え。
「さて、これも洗っておかないとな」
「エスプレッソが飲みたいぞ」
「はぁ!?流石にそれは淹れられないって!」
空いた食器をまとめて流しに持っていこうとした綱吉に、リボーンからのリクエスト。ちなみにリボーンが来てから専用のエスプレッソマシーンが台所に置かれているのだが、綱吉は怖くて未だに指一本触れたことはない。しかしリボーンの指は間違いなくそのマシーンを指差している。
「インスタントコーヒーじゃダメ?」
「あんなもんは何でも作れるはずの日本人の汚点だぞ」
何かと凝り性で知られる日本人は、異文化を取り入れては自分達の文化にしてきた。時には本場でさえ舌を巻くほどのものを作り上げて見せるのだが、インスタントコーヒーやインスタントの紅茶に関してのみ失敗したとリボーンは思っている。
「でも俺はじめてだし・・・・」
それではリボーンが納得するようなエスプレッソを今すぐには用意出来ないと口を濁す綱吉に、リボーンはニヤリと笑って宣言した。
「大丈夫だ。俺がねっちょり手取り足取りレッスンしてやるぞ」
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