マンションにつき、手を繋いだまま足早にエントランスをくぐってエレベーターに乗り込んだ。
誰も居ない事をいいことに、部屋のある階につくまで何度も触れるだけのキスを交わし、そうして鍵を開け玄関に二人でなだれ込んだ時にはもう我慢はきかなかった。
触れるだけだったキスは舌を絡める濃厚なものに変わる。
お互いの体をきつく抱きしめ、靴を脱ぐのももどかしく玄関マットに体を横たえられた…その時だった。
「クシュン!」
玄関に綱吉のクシャミが響いた。
「……」
「……」
そうして我に返る。
そう言えば二人ともずぶ濡れのままだ。
自覚した途端に、熱くなっていたはずの体に冷えを感じた。
出来るなら今すぐにここでなだれ込みたいところだが、このままで体が冷えた状態では風邪をひきかねない。
「風呂、入るか」
「うん」
リボーンの提案に、綱吉はすぐに頷いた。
「一緒に…入る?」
「当然だろ。先に入ってろ、すぐに行く」
綱吉の手を取って立ち上がらせ、そのままリボーンは綱吉をひとりでバスルームに押し込める。
一緒に入ると言いながらどこに行くのかとリボーンを見れば、着替えを持ってくるだけだとなだめるように頭をクシャリと撫でられ、綱吉は仕方なくリボーンの手を離した。
どうせ着替えなんか持ってきても直ぐに脱がされるのに…
そう思いながらひとりで赤くなり、考えていた事を振り払うように着ていた衣服を乱暴に脱ぎ棄てると、何気なく横目でバスタオルなどの詰めてある棚を見た。
「あ、そういえば…」
ふと、思い出したように一番下の引き出しを開ける。
そこには、リボーンが趣味で集めた入浴剤が山ほど詰め込まれていた。
綱吉にしてみればどれも同じような入浴剤であるが、効能や香りがそれぞれ違うのだとリボーンは言って譲らない。
時々変な所でマニアな癖がでるよな…と思いつつ、綱吉はその中から目的の入浴剤を探し出した。
「えーと…、あ、あった。これこれ」
見つけた途端にニコリと笑う。
それはリボーンのコレクションの中で綱吉が気に入っているシリーズの一つだ。
キューブ型のそれは、湯に入れれば途端に泡風呂に代わる。
桃の香りが付いているのもお気に入りの理由だ。
「せっかくだから入れちゃお」
鼻歌交じりに綱吉は嬉々として風呂場の中へと消えていった。


一方リボーンの方は、寝室で大きなため息をついていた。
だが決して嫌な事を吐き出すための溜息ではない。
あくまでこれは、自分を落ち着かせるための深呼吸のようなものだった。
「あっぶね…。マジで暴走寸前だぞ…」
するとは思っていたが、予想以上に自分を押さえつけられそうにない状態だ。
一緒に暮らして、それこそ数えきれないくらい抱いてきたはずなのに。
いつまでたっても綱吉の体はリボーンの欲を掻き立ててやまない。
ともすれば、綱吉の体を壊してしまうんじゃないかと思えるほど暴走してしまう時もある。
翌日にぐったりとしている綱吉の姿を見るたび後悔のような感情が湧くのだが、当の綱吉がそんなリボーンの事を許してしまうため直ぐにまたタガを外してしまう。
それではダメだ。甘えている。
そう思うのに、どうしたって止められない。
今もそうだ。
自分の欲を止められる気がしない。
だからいったん落ち着こうと綱吉から離れてみたのだが…
「リボーン?ねぇ、お風呂溜まったよ。早く」
「あ、ああ。すぐ行く」
風呂場からどこか甘えたような綱吉の声で名を呼ばれ、その声の甘さに落ち着くどころか自分のソコが余計に元気になってしまい頭を抱える。
「ったく、正直すぎだろ…」
元気に大きくなったソコに叱咤してみるが、そんなことくらいで息子が落ち着くはずもなく。
「…ま、こいつの原因はツナにもあるしな。責任取ってもらうか…」
次の瞬間にはどこか開き直ったように顔を上げ、リボーンは着替えを持って風呂場へと足を向けた。
「なんだよ、入浴剤入れたのか」
「うん。泡のやつ」
「ふぅん…」
濡れた衣服を脱ぎ捨て中に入ると、綱吉は湯船に浸かってリボーンの到着を待っていた。
その湯船の中には入浴剤が入っているらしく、お湯は乳白色に染まりほのかに桃の香りを漂わせ、水面には泡がたっぷりと浮いていた。
直ぐにそれが、綱吉の気にいっている入浴剤だとわかる。
その入浴剤を綱吉が選んだと言う事は、今の機嫌は良いらしい。
「体は洗ったのか?」
「さっとね」
「髪は?」
「リボーンが洗って?」
「ああ」
ボディーソープを手に出し泡立てながら全身を洗い、ついでに湯船に浸かっている綱吉の頭を引き寄せその頭にシャンプーをかけてやる。
「わっ、ちょっ、目に入る…」
「ぎゅってしてろ」
「耳に水入れないでね?」
「誰に言ってんだ?」
「んんー、気持ちいい…」
ワシワシと泡立てながら綱吉の頭を洗っていると、綱吉の手が悪戯をしかけるようにリボーンの体を撫で始めた。
「こら、やめろって」
「やだ」
笑いながら綱吉の手がすでに元気になっているそれに触れ、一瞬だけビクリと手を離す。
「でけぇだろ?」
「う、うん」
「後で射れてやるからな?」
「お手柔らかにお願いします…」
手を湯船に戻し、真っ赤になりながら大人しくなった綱吉を見て笑いながら、リボーンはシャワーでシャンプーを落としてやると今度は自分の頭を洗い始める。
その姿をしばらく黙って見つめていた綱吉だが、不意に思いついたように「お背中お流ししますか?」とリボーンに尋ねてみた。
「ああ?」
「だから、背中流してやろうかって言ってるの」
「…そうだな」
「それどっち?」
イエスともノーともとれる返答に綱吉がどっちだともう一度リボーンに聞くと、
「わっ!」
シャワーヘッドをこちらに向けられ顔に思いきり水をかけられた。
そうして綱吉が驚いている隙に全身を洗い流し、リボーンは綱吉の浸かっている湯船へと体を滑り込ませる。
「背中流してもらうより、俺はツナの体を洗いたい」
狭い湯船に二人も入れば当然お湯は溢れた。
せっかくの泡も半分が排水溝の中に消えてしまい、ようやく顔を上げた綱吉はその泡を残念そうに見送るが、のんびりとしていられたのはそこまでだった。
向かい合わせに座っていた体をクルリと反転され、リボーンの腕の中に背を向けた状態で抱き込まれる。
「もう少し泡足すか?」
聞きながら、綱吉の耳裏を柔らかく舐めれば、綱吉は小さく声を漏らしながら「いい」と小声で答えた。
「泡、もういい」
「せっかくの泡風呂なのにか?」
「だって…、けっきょく流れちゃう…」
「そうか?」
笑いながら、まだ残っている泡を湯から出ている綱吉の肩に乗せて遊ぶと、綱吉はじれったそうにフルフルと首を振った。
「後ろ…あたってるよ?リボーン」
「まぁな」
ミルク色の湯船の中。
泡は少なくなってもお湯はソープで真っ白のままで、そんな中で密着した体は湯の外からは見えないが、その分触れた部分がいつもより敏感になっている。
下肢にあたっているリボーンの熱はお湯よりも熱くて、綱吉の体もつられるように熱くなった。
「洗ってやるよ。せっかくだから」
「んっ」
言うが早いか、リボーンの手が綱吉の体をまさぐり始める。
左手は胸付近を、右手は腹の辺りをさまよい、洗うと言うよりは明らかに愛撫の意図をもったその動きにくすぐったさと同時にゾクゾクとした気持ちよさが湧き上がり綱吉の全身を支配した。
「あ、待って…」
「待たねぇ」
思わずリボーンの手を止めようと手掴むが、ソープで滑ってうまくリボーンの手を掴めない。
代わりにリボーンは、その滑りを利用して綱吉の体を思う存分撫でまわした。
先ほど服の上から触れた乳首にも今度は遠慮なく触れる。
「ふあっ」
ビクリと動いた綱吉の腰に、リボーンのそれが気持ちよく擦られさらに硬度を増した。
そのまま何度が背中に自身を擦りつけ、綱吉の前へと手を伸ばす。
「んんっ」
掴んだそこは、リボーン同様角度をつけて堅くなっていた。
「なぁ、ツナ。いったん出すか?」
「はっ、う…ん」
コクコクと頷くだけの綱吉に、リボーンはまた勝手に解釈するとぬるぬるとするお湯の中で綱吉のそれを扱いてやる。
「やぁ…」
パシャパシャとお湯が跳ね、その水の勢いが見えない水中でどんな行為が行われているのかを語っているようで余計に興奮する。
「りぼーん…、も、だめ…」
いっちゃう。
小さく呟かれた綱吉の声に、リボーンのそれも触れていないはずなのに爆発の兆しを見せていた。
そして、
「はっ、あ…!」
ひときわ大きく綱吉の体が跳ねる。
お湯から一瞬身を乗り出し、そのまま今度は脱力してお湯の中に沈んだ。
「おっと」
リボーンは急いで湯の中に落ちていく綱吉の体を抱え上げると、一度綱吉の体を湯船から外へと連れ出してやる。
「熱い…」
「だろうな」
自分だってそうとう熱い。
お湯に浸かりながらあんなことをしたのだ。
のぼせなかっただけまだましだろう。
「ほらよ」
「んー…」
何時の間に持ち込んでいたのか、リボーンがペットボトルの水を綱吉に渡す。
それに口をつけながら、湯気の向こうに居るリボーンを綱吉はぼんやりと見つめた。
「お風呂場でとけちゃいそう…」
ペットボトルを口に咥えながら「はぁ…」と熱い息を漏らす綱吉に、
「溶けるなら、俺の腕の中で溶けろ」
リボーンの腕が再び伸びてくる。
「まだまだこれから…だろ?」
そう。2人の休日は、まだ始まったばかりだ。
ほら、時間はまだたっぷりと残っている。
「まだまだいいこと、いっぱいするぞ?」
ニヤリと笑ったリボーンに、
「…お手柔らかにお願します…」
何度目かになるその台詞を口にしつつ、綱吉は全身の力を抜いてリボーンにその身を全部預けた。

さぁ。
快楽の休日を、君と二人でたっぷりと堪能しようか…。
誰にも邪魔させない。
これが2人だけの、正しい休日の過ごし方だ。



(終)




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