仮面舞踏会-4





その時、何故かその姿を追い掛けた。


ワルツも何も全てどうでも良くなった様に。


「どなたですか? 」

鈴の音の様な声を掛けられた。
いつの間にか僕も裏庭に出ていっていた様だ。先に出た彼女が真横にいて、こちらを見ている。

この時初めて、僕は彼女の顔をはっきり見ることが出来た。
彼女の髪は透き通る位に青くて、おろしたらきっと長いであろうその髪は何やら複雑に編み込んであり、そこにはささやかな真珠の髪どめが飾られていた。
仮面はシックに黒でまとめられて、所々にに金のラインが入っていた。
そして、彼女はタイヤがついた椅子に座っている。

「えっと、あの…レックスだよ。」
「そうでしたの。お噂はかねがね聞いておりますわ。私はサラボナのシーナと申します。」

彼女…もといシーナは微笑んで話を続けた。

「本日は、父アンディと母フローラの替わりに弟のマリウスと共にこの仮面舞踏会に参加したのです。」

そう言って彼女はお辞儀をしてきたため、僕も見倣って自分の頭を押さえた。

それにしても彼女は脚が不自由なのだろうか。先程から歩くのではなく、イスの両脇についたタイヤを自ら転がして移動していた。
僕の視線に気付いたのか、彼女は微笑んで、

「私は脚が不自由なのです。大丈夫ですから、お気を遣わないでください。」

と言った。


  
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