ザザザザザ―――

繁る草木を掻き分けて走る音が聞こえる、いくつもの影が闇色に染まる森を駆ける中で、先頭を走る一人の忍がクナイを構えて動きを止めた。

「‥‥ッ来い!」

声と同時に響き渡るのは金属がぶつかり合う音、何度か空気を振動させると幾人かの忍がどさりと地面に落ちていった。

落ちた瞬間に全身の骨でも砕けたのか、手足は妙な方向にねじ曲がっていてピクリとも動かない。
しかしそれを気にする者などおらず、たった一人で交戦している木ノ葉の忍へと敵忍たちは一斉に向かった。

「これで‥ッ、終わりだ!!!」










赤子さながらに啼いてやろうか









第三次忍界大戦が終結し数年、水面下で里同士の小競り合いは絶える事がない。

木ノ葉は大きな里だが大戦で多くの死者を出し、翌年の九尾の襲撃により里は壊滅寸前。
自他共に認めるかなりの忍不足となっていた。

これを機に大国である火の国の隠れ里である木ノ葉を落とそうとする里が後を絶たない。
それ故暗部のみならず、上忍・中忍も連日続く敵忍排除に駆り出されている。

しかしランクの高いものは必然的に暗部へと回る。
下手な割り当てで大切な戦力、里の人間を減らすことは出来ないからだ。

四代目火影が九尾の封印と引き換えに命を落とし、三代目が再び現火影として里を仕切っているが彼の心労は誰よりも大きいだろう。

里の者すべてが彼を敬い愛している。
火影である彼の決断に同意し、そして全てを託す。
だからこそ、命を懸けて戦うのだ。

深い森の中、里を狙い襲ってきた忍たちの屍の中に佇む青年もその一人。
両腕には戦闘によって出来た傷から血が滲んでいるが、彼を包み込むように覆う大量の返り血がその姿を闇の中に赤く浮き出たせていた。

「そろそろ里に帰ろう。次の任務、行かなくちゃな」

ふう、 と一つ息を吐くと印を組み死体を処理するために炎を灯す。

里を襲った忍だ、これ以上の侵入を防ぐために見せしめとしてこのままにしておいてもいいが死体は臭う。
辺境とはいえ火の国内、一般人が訪れる場所でもないがこの死体から自分の技やら術やらを解析されでもしたらそれこそ面倒。

「‥火遁」

術によって放たれた炎は屍だけに灯り、飛んだ血沫さえも綺麗に燃やしていく。
暗かった森の中はポツポツと灯る炎でふわりと明るくなり、仮に他者の目に映ったとしても死体が燃えているなどとは思えない幻想的な光景だった。

何が燃えているのか知らなければ、素直に綺麗だと誰もが思う。
炎は消えることなく光を放ち、闘いの中移動してきた軌跡を辿るように森の深くまでその光を通らせる。

「‥なんだ?」

照らされた一部、そこに何か白い塊が見え青年は目を見張った。





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