「‥子供?」

警戒は怠ることなく傍に寄ると確かに子供だった。
それも乳飲み子サイズ、小さい。

1歳にもなっていないんじゃないだろうかとも思うが、何故こんな場所に?

「死んで――」

「こほっ!‥‥こほ‥‥」

「い、生きてる?」

人里から離れたこんな場所、誰が来るとも思えない所に子供がいるなんて絶対死んでると思ったのに。

返り血を浴びた体で触れるのも躊躇われたがこのままにしておくのも…と思い悩んだ挙句に結局抱き上げる。
布も何も纏っていないその体は氷の様に冷たくて、微かに震えているのが伝わってきた。

とりあえず外套で包み、どうしようか考える。

「まさか子供連れで里に攻めてきたりは…しないよねえ?」

ってことはずっとここに?

そんなはずはない。
今夜の敵は多かったが、倒れている子供を見落とすようなことはしない。

とするとこの子供は突然現れたことになる、しかも“何もない場所から”。

やっと戦闘を終えた安堵からか、無駄に長く考え込んでいる青年はふと自身の体の異変に気付き、傷ついていた腕に視線を向けた。

「あれ‥?傷が‥治る―――?」

両腕にあった傷が徐々に塞がっていく。
流れていた血も止まり、痛みすらも波が引く様に消えて行く。

「あらら、チャクラまで回復してる」

戦闘により削られたチャクラ。
右手を出して意識を集中する、瞬く間にバチバチと電撃を放つチャクラの塊が作られていくのを見て、青年は困惑を乗せた表情を見せた。

「もう今日は作れないと思ったんだけど」

右手をギュッと握りしめ、バチッと音を立てて青白い光を放つ雷の塊を消した。

どうやら…いや、多分この子供が原因か。
どうしようかなあなんて、先ほど死闘を繰り広げたとは思えない顔をして青年は悩む、そしてその挙句再びある事に気付いて頭を抱える事になる。

「うそでしょ‥この子‥‥。‥ま、火影様に任せるか」

何しろこんな小さな子供をこんな物騒な場所には置いておけない、判断を火影に丸投げってのもどうかと思うがそんな意見を言う仲間も師も家族も友人も、この場には一人としていない。

「行くか。」

軽い動作で頭上に伸びる太い木の枝へと跳躍した青年は、すでに炎が消えて元の暗い森へと戻った地を後にするため里へと足を進めた。

腕にある子供を落とさぬよう、ギュッと抱え夜空を駈ける体は青年と言えどまだ幼い。
月の光に銀の髪がキラキラと光り、隻眼とは思えない動きで闇夜を渡る。

腕に抱く子は震えも収まり眠ってしまっているようだった。
そっと外套を手繰り深く被せると、青年は面の下で僅かに頬を緩ませた。




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