「菜花……」
「、リクオ…」
「…悪かっ、た」
「…え」
呼ばれた名前に振り向けば、直ぐそこにリクオが立っていて
謝らなきゃ、と思った途端小さく聞こえたそれに目を瞠る
「…悪かったから……別れるなんざ、言わねぇでくれ……」
「……、…」
小さな声で、それでも確かに謝ってくれたリクオは、そのまま言葉を続けて
不安げに、心なしか潤んで見える紅玉にどうしようもなく愛しさが溢れる。
こんなに可愛い子を、今更手放せる訳がない
「…菜花…?」
「私も、ごめんね?リクオ…勢いで別れようなんて言っちゃって」
「…じゃあ、」
「仲直り、してくれる?」
合わされた目に笑って、意地も矜持も捨てて
今度は私から、仲直りをお願いして
「ん…、」
「ふふっ…ありがとう」
「……首無と、何してたんだ?」
ぎゅっと、抱きついてきたリクオの髪を撫でる。
ぽつり、問われたそれにまた笑みが浮かんだ
「リクオと喧嘩しちゃったって相談してただけよ……妬いた?」
「当たり前だろ…別れるとか、言われた後だったしな……」
「リクオ」
「ん…?」
「大好き」
「っ、……おぅ」
ぼそぼそと顔を埋めたまま呟くリクオの名前を呼んで、顔を上げたリクオに言葉と共に接吻をひとつ。
ほんのりと頬を染める姿は、やっぱり愛しくて仕方なかった
意地
(つまらない意地は捨てて)
(愛しい君に、口付けを)
終
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