「……なんじゃ、あれは」
賑やかな通りを歩いていたぬらりひょん。
咲喜を探してぶらぶらと散歩気分で闊歩していると、遠くからでも目立つ人だかり。
何故か女性ばかりではないか。
明鏡止水で姿を見られないようにしているが、何気に気になったのでその集団の所へ寄ってみた。
「大丈夫ですかッ!?」
「いえ、すぐに治りますから」
「だ、駄目です! 思い切り顔面蹴られていたではありませんか!」
「あぁ、あれは彼女なりの愛情表現なので。それにほら、傷一つついていないでしょう?」
「そうですが、あとで痣が浮き出てしまったらどうするのです!? 手当てしなければ…」
「いや本当に大丈夫d「ちょっと何さり気に抜け駆けしようとしてるのよ!! あの、私の家医者なので!」
「はぁ!? アンタの家なんてただの農家じゃない!!」
「うッ、五月蠅い! そう言うあなたの家だって、食い繋ぐのがやっとのくせに!」
「連れて行くは私よ!」
「何勝手に決めてんのよ!!」
「そうよ、私よ!」
「あんたなんか何仕出かすかわからないわ!!」
「……………;;(汗」
「…………………………」
なんというバイオレンスな光景だろう。この場にいる女が少し恐ろしく思える。
見てはいけないものを見てしまったような喪失感。
(……ワシ何してたっけ)
思わず目的も忘れてしまった。溜息を吐きながらげんなりしていると、囲まれている男と目が合った。
む? ワシが見えているのか?
後ろを振り返ってもさっそうと歩いていく者ばかり。巻き込まれまいとしているのが見え見えである。
キョロキョロとくまなく視線を彷徨わせても、こちらに目を向ける者はいない。
もう一度男を見てみる。
(ニコッ☆)
え、ワシなのか!? 爽やかに笑っといて何気に「助けろ」と言ってきているのか!?
(ニコニコ)
「…………」
ワシ一点だけを見つめるのをやめろ! 他にもいい奴はいる!!
(ニコニコニコニコ)
「……………………(汗)(汗)(汗)」
純粋に笑っているように見えるが………
絶対楽しんでるだろ此奴。
「(はぁ………)おい、集団で集るとは見苦しいぞ?」
「!!」
いや、目をキラキラさせるのはやめろ、マジで。これくらい自分で追っ払え。
「は? 何よ、あなたには関係…な……(な、この人もかっこいい!)」
「「「「………///」」」」
「よし、行くぞ!!」
とりあえず男を引っ張り出して逃げた。
「「「「あっ!!」」」」
prev / next
→ TOPへ