『さて、そろそろ屋敷に帰るかな。』
陽が傾いてきた、さすがの仙狸も怒り出すだろう。
立ち上がり後ろを見れば白沢と目が合った。
『大切な日の時間を貰って悪かった』
「いや、楽しかったよ。ここまで来てよかった、会えたんだからな。」
『また会えたらいいな。いつか京の屋敷にでも来て‥‥‥いや駄目だな、今は駄目だ。』
「?‥ついに所帯を持ったのか?」
『なぁ!何言ってる!?最近変な妖に付き纏われてるんだ、だから今日はこんな遠くまで、』
だから今日は‥ということはあいつのおかげで白沢に会えたことになるわけか?
なんだか納得できないが‥まあいいか結果が全てだ。
「その妖‥名は?」
『名?ああ、ぬ‥‥‥‥‥‥嫌だ、名を呼んだら出てきそうな気がする。』
「はは、そんな妖いるものか」
『あいつは他とは違う‥侮ったら危険だ』
むぅ、と眉を寄せた。
油断ならない、の一言に尽きる。
その名の通りぬらりくらりと厄介な奴。
「そういえば黒蝶、今生の名は何と言う?まだ聞いてなかったな、次出会った時の為に聞いておきたい」
『今は‥‥‥』
「咲喜!こんなところにおったのか!?」
『な!ななななな!!お前なんで!』
もう陽も落ちた。
顔を上げれば今度は暗い緑の中に金の髪が光る。
必死で逃げてきた場所だと言うのに呆気なく見つかった。
「さ、帰るぞ咲喜もう遅い。なんならワシの宿に泊まってくか?」
『阿呆か!離せ!!』
手を取られ引き上げられる。
妖の位置からは白沢の姿は見えないらしく金の瞳に自分の姿だけが映った。
抱き込まれ暗闇の中に立つ、全く人の話も意見も聞かない所が逆にすごいとさえ思った。
「よし、行くぞ」
『っぅわ!離せたわけ!!――白沢、一言だけ!』
「?‥黒蝶?」
『おめでとう、生まれて来てくれたこの日に感謝する!数百年前、お前に会えたんだからな。』
「‥何言っとるんじゃ咲喜」
『煩い!離せ!!』
「嫌じゃ」
キーキーと怒る黒蝶の声が遠ざかれば静かな闇が全てを覆う。
「生まれて来てくれた日か‥‥あたしも前に進まないといけないんだよな。」
広がる闇。
瞳を閉じても同じはずの暗闇に光が見える。
「あたしもいつか変われるだろうか。」
冷たい風が頬を撫でた。
桜色の髪が揺れて次に現れたのは神獣。
闇に解けるように姿が消えて、木の葉の揺れる音だけが響いた。
いつかまた会おう。
その時は二人とも心からの笑顔でいられるよう願う。
おしまい。
うちの夢主さんがぬらりひょんとくっついたら姫華様の夢主さんはうちの子の孫の嫁ってことになるのでしょうか!?
二人とも長生き(うちの子はちょっと違うけど;)なだけになんだかドキドキな展開です。
過去編が語られていないのでぬらりひょんとの接触は省きました(笑)
今後どのように語られるのか楽しみにしてます^^
素敵企画に参加させていただきありがとうございます。
この度はおめでとうございました^^
二人の笑顔目指してがんばりましょー!(笑)
2011.12.17
ととり
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