sample | ナノ
この大雨のため海に潜る事は困難となり、お頭から急遽暇をもらった俺は、その日水軍館で自由な時間を満喫する事ができた。
◯◯と一緒に料理をしたり掃除をしたり、魚の仕込みや道具の修繕をしたり、航達も交えて遊んだりと……色々と楽しかったな。
さて、寝るか。と、本格的に布団の中に潜り込もうとしたら、◯◯の声が障子の向こうから聞こえてきたので驚いた。
縁側の先は大雨な事もあり、急いで障子を開ける。
「◯◯!どうしたんだ?」
寝間着に枕を抱えてやってきた◯◯の姿に、一瞬ドキッとする。
「すみません、重さん。私の部屋が急に雨漏りしちゃいまして…」
「え!?」
「あ、鬼蜘蛛丸さん達が桶を用意してくれたのでっ。ただ今日は、私の部屋で寝る事ができなくなったので……その」
言いたい事が何となくわかり、期待して待ってると◯◯が恥ずかしそうに口を開いた。
「今日は、その、一緒に寝てもいいですか…?」
ありがとうございます、雨漏り!!
不謹慎だと思いつつ天の恵みに感謝しながら、徐々に飛沫がこちらに寄ってきたものあり、◯◯を部屋の中へと招き入れた。
「さ、さっき寝ようとした所だからっ。入って入って」
「お邪魔します。わぁ、あったかい…」
俺の熱が残っていたのか、◯◯は布団の中へ入ると嬉しそうに笑みを浮かべる。
俺は思わぬ展開にごくりと喉を鳴らした。
好きな女性と、同じ布団の中で寝る。
…何も邪な感情が芽生えない訳がない。
「ありがとうございます。重さんも…」
「も、もちろん…!」
布団を開いて潜ると、俺は早速◯◯を抱きしめた。
なんだか甘い香り、と、柔らかい感触にむくむくと欲が芽生えていく。
「ふふ、重さんくすぐったいです…」
「◯◯、寒くない…?」
「大丈夫です…」
安心するかのように目を閉じて、俺の胸に顔を埋めてきた◯◯に悶絶する。
信頼されてる事に嬉しくなったけど、俺の心境は複雑だった。
…今すぐにでも、シたいんですが。
「……あー、◯◯、あの、さ……」
暫くして、思い切ってお願いしようと◯◯に声をかけたが、返事がない。
次第に、規則正しい呼吸が聞こえてきて。
まさか…と思い、視線を落とすと。
……◯◯は寝てた。
(な、生殺し………っ)
俺の気も知らないで…。
小さく寝息を立てて穏やかに眠る◯◯を見て、なんだか気を抜かれてしまった俺は溜息をついた。
あぁもう、可愛いな本当に…。
髪を撫でながら額に口付けを落とすと、◯◯が寒くならないように布団をかけ直す。
明日、◯◯が起きたらどうしようか…。
俺にこんな思いをさせたのだから、少しだけ覚悟しといてほしい。
2020/11/16
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