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噂話

 「ねぇねぇ知ってる?

  夜中の0時に北の森に行くと願いが叶うんだってー」


 「ねぇねぇ知ってる?

  夜に北の森に行くと今一番、会いたい人に会えるんだってー」

 
 「ねぇねぇ知ってる?

  北の森のベアの小屋、あの小屋に好きな人と手を繋いで入ると両想いになれるんだよー」




***
**
*




 
 「えーっ!!それ、ホンマー!?」

 「あんた、別に好きな人なんていないでしょ」


 と蛍からの鋭いツッコミを受けて蜜柑は膨れっ面


 「そもそも、手を繋いでベアの小屋に向かってる時点で両想いよね」

 と蛍はどこまでも冷静に会話をさばいていく



 しかし、こう立て続きに北の森が話題に上ることは珍しい

 色んな噂が飛び交いすぎて、元ネタが何であったのかは定かでない



 「じゃあさ、じゃあさ

  今から皆で北の森に行ってみーひん?」

  蜜柑が元気よく提案する


 「バカ蜜柑、それじゃあ噂のどの条件も満たさないじゃない

  好きな人がいないんだから、行くなら夜中の0時にベアの小屋」


 と、蛍は不敵な笑みを浮かべている




「えーっ!だって、夜中にベアの小屋なんて、ベア、めっちゃ機嫌悪いに決まってるやん」


 と、発案者が泣き言を言い始める



 「あ、なぁなぁ棗とルカぴょんも行くやろー?」


 「ちょっと!佐倉さん!

  あなた、まさか棗君、ルカ君と手を繋いで行こうなんて思ってないでしょうね!?」



 「はぁ〜?なんでうちが、そんなことせなあかんねん!」

 「はっ!てめぇなんざ、こっちから願い下げだ

  ぼけ!」



 「棗君、ルカ君、私と一緒に・・」

 と目を輝かせながら、誘いをかけようとするパーマの方を振り返ることなく棗は教室を去る



 それを追いかけるように教室から駆け出て行くルカ





 こういった光景は初等部のころから何一つ変わっていない





 「・・ルカ」

 「どうしたの?棗・・」



 「おまえ、今晩あいてるか?」

 「・・もしかして、棗、さっきの本気で行くの?」



 「・・どうしても、気になることがある」

 「気になること?」


 棗はそれっきり黙ってしまう

 ルカは棗の後を追いかける


 何も喋らない棗だがルカにはついて来てほしいという気持ちが伝わってきた




 着いた先は寮の棗の部屋



 部屋に入るとルカはいつものように鞄を下ろして床にあぐらをかいて座り込む


 棗は机の引き出しを開け何かを取り出す

 その行動をずっと見守っているルカ



 ルカの横に座り込む棗の手には古びたネックレスが握られていた



 小さな薄い蜜柑色の石とそれよりは幾分大きな藍色の石がぶら下がっている



 「・・棗、それもしかして」

 「あぁ、アリスストーンだろ」

 「・・もしかして交換したの?珍しいね」



 ルカは眼を丸くしてそのネックレスを見つめる

 一番の親友は年上から年下まで女子からもてる


 しかし、今まで一度だって恋愛の話が持ち上がったことは無い

 まして、アリスストーンを交換しただなんて



 ルカは、何の相談もなかったことが少なからずショックだった



 「・・勘違いすんなよ

  机の中に入ってたんだ」


 更に眼を見開くルカ



 「・・机の中?」

 「あぁ」


 その言葉に幾分ほっとしてルカは息をつく

 いつも近くにいる親友の気持ちに気付いてあげられなかった、というわけではなかったのだと


 「・・捨てないの?いつも、顔も知らねぇ奴からの贈り物なんて気味が悪いって言って捨てちゃうくせに

  もしかして、心当たりがあるの?」


 「心当たりはねぇけど、何でか捨てる気になれなかった

  部屋の机の中に大切そうに閉まってあったんだ」



 ゆっくりと話す言葉に耳を傾けるルカ




 「いつもなら、さっさと捨てる俺が、机の中に閉まってたんだ

  でも、いつどこで誰から受け取ったのか、何にも覚えてねぇ」


 「何のアリスなの?」

 「・・・」

 「一度、試してみたら?もし、珍しいアリスならそれだけで、誰の物か分かるかもしれないし」

 「試した

  でも、何も起こらなかった」

 「・・・そっか」



 棗がどうしたいのか、そして自分はそのために何をしてあげられるのか考えあぐねるルカ


 

 棗が何かを決意したように口を開く



 「・・ルカ、知ってるか

  今日、学校であった北の森でどうこうっていうやつ」

 「えっ?夜中にベアの小屋へ行くっていう・・」

 「・・あぁ、噂の出どころは高等部らしい」

 「そうなんだ」


 棗が何を言おうとしているのか分からないルカは生返事を返す


 「・・元の話では、初等部生が夜中に北の森をうろついているのを見かけたやつがいるって」


 「まさか!そんなはずないよ!

  初等部の生徒が寮の門限を超えて歩き回るなんてできるわけない

  寮母のタカハシさんが見逃すはずがないよ!」



 「俺は、今から噂の出どころを掴みに行く」

 そう言って棗は、ネックレスを握りしめ寮を出た


 その棗の真剣な様子に驚き、後を追う




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