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 春休みが開けて久々に学校に訪れるとあっという間に体育祭の準備が始まる

 団ごとにそれぞれのアリスを駆使して勝負が行われる、少し変わったアリス学園の体育祭

 団分けは、潜在能力+特力、体質+技術と毎年きめられている






 体育祭に向けて、学園全体の士気が高まっている





 使い方に幅のあるアリスを持った名前は、パン食い競争とくじ引きで外れて、借り物競争に出場することに・・



 アリス学園の借り物競争は、箱の中からお題となる紙を取り出すところまでは一般人の競技と同じ



 ただし、その紙は白紙で、紙に触れた人が最も借りにくいと考える物や人などが浮かび上がって来る

 そして、借りてきたものが正しい物かどうかを読心術のアリスを持った人たちにより採点される



 なんとも悪趣味な競技でアリス学園体育祭の中で、最も出場したくない競技として毎年名を馳せている



 見ている人たちは、出場者のまごまごと焦っている様子が面白いと好評なのだが・・

 なんともまあ、悪趣味な競技である



 「名前の心は読心術のアリスでも読めないからもしかしたら、有利なんじゃないか?

  嫌なお題が当たっても、とりあえず適当に見繕って、」


 「・・適当なこと言わないでください・・」




 落ち込んでる名前を慰めるように、翼が名前の頭を撫でる





 「名前〜、大丈夫やろか〜?

  翼先輩、借り物競争ってそんなに嫌な競技なんかー?」



 蜜柑にとっては、初めての体育祭



 アリス学園の体育祭は派手で、珍しい競技もあるのではないかと胸を膨らませていた蜜柑は名前の落ち込みっぷりに少し、尻込み始めている




 翼は苦笑いしながら、蜜柑に借り物競争が嫌われる理由を説明する

 その説明を聞いて、名前は小さくため息を吐き、ただでさえ重たい気がまるで、漬物石を縛り付けられたように沈んでいく

 ますます嫌な体育祭になりそうだと名前は机に突っ伏した





***
**
*




 

 晴れない気分を紛らわせようと、突っ伏した格好のまま気が付くとほんの数分ではあるが眠りについてしまっていたらしい




 先輩や佐倉さんたちは、いつの間にか皆で集まって体育祭での作戦を練っている

 少し気を遣わせてしまっただろうかと、皆のいる方に眼を向けると赤い眼と視線がまともにぶつかる




 バレンタインのチョコ事件以来、なんとなく気まずくなって、ほとんどまともに会話を交わしていない




 間に、1つ上の初等部の人たちの卒業式や春休みなんかを挟み、その間ずっと任務に没頭していたせいで、何も考えなくて済むくらい顔を合わせることもなく安心しきっていたのである

 その時間のせいで、ますます顔が合わせづらくなってしまったのだ




 同じように翼先輩とも顔を合わせづらくなると思っていたのだが、先輩は拍子抜けするほどあの時のことに触れず、いつも通りに接してきた

 その振る舞いに戸惑いつつも、何も聞かずにいてくれることがありがたかった




 日向君からなんとなく、目を逸らせないでいると、フッと視界が遮られる




 そしてそれと同時に、くすりと笑う声が聞こえる

 そのいかにも、人を馬鹿にしたような笑い方にそもそもの重たい気持ちの元凶を感じる




 「苗字さん、大変だとは思うけど頑張って」



 そんなのは余計なお世話




 小泉月は自分のアリスを隠し通している

 

 本人曰く、人より体が弱くてアリスを発動させると極端に体調不良を起こすとか・・

 そして、何のアリスか説明も難しい、ただ、その珍しいアリスは特力系に当たるらしい

 1度みんなの前でアリスを見せようとしたときは、佐倉さんのアリスに無効化されて発動しなかったとクラスの子たちが言っていた




 なんだかんだと言い訳を並び立てているが、私か佐倉さん、あるいはその両方を見張るために特力系に潜入したのだと私は勘ぐっている


 

 「そんなに警戒心をむき出しにして睨まないでくれる?

  そういう顔見てると、本当にあの女によく似てる

  普段の顔は、父親にそっくりだけどね・・」


 サッと体中の血液が引いていく

 誰にも話していない、知られているはずがない

 自分でも顔がこわばっているのが分かる


 そんな私の様子に気を良くしたような月



 「安心して、まだ誰にも言っていないから

  ・・まだ、ね・・」


 そう言って余裕たっぷりの笑みを浮かべて、くるりと背を向け教室を出て行く月


 
 ・・眩暈がする・・




 「おいっ、何やってんだよ

  てめぇも参加しろ」


 急に後ろから制服の襟首を引っ張られ、体がよろける



 慌てて体性を立て直しながら声のした方を振り返ると、先程まで皆の話し合いの輪の中にいたはずの日向君が私の制服の襟首をつかんでいた




 ずるずると引きずられ、話し合いの輪の方へと引きずられるようにして歩く

 「あからさまに避けてんじゃねぇ・・」




 いきなり何事かと、目を丸くしていた時に突如かけられた予想外の言葉

 心配してくれていたのか・・

 その優しさが、凍った心を溶かしてくれたような気がした




 私も日向君も素直じゃないなと笑みが漏れる

 「何笑ってんだ」

 ベシっと頭をはたかれる




 「・・ひゅ、棗君の言う通り、せっかくだから・・

  体育祭楽しもうかなって・・・」




 そう言うと、日向君がスッと眼を細めた

 まるで、大切なものを見るように

 嬉しそうに・・そして、愛おしそうに





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