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初めまして

 1度だけアリスを通して見た赤い瞳

 「・・初めまして」

 と悠長に挨拶を交わしている場合でもないらしい




 目の前にいるのはペルソナ

 その足元で苦しそうな呼吸を繰り返しながら倒れているのは佐倉さん



 「・・ペルソナ、佐倉さんにアリスを使った・・?」

 「・・ふん、だったらなんだ

  こんな立ち入り禁止区内にまで来て、身の安全が保障されているとでも?」



 「てめぇっ」


 結界によるリバウンド

 バチッと火花の光と音が狭い廊下に響く



 と同時に、ぐらりと日向君の体が傾いでいく





 もう1度ペルソナに向かおうとする佐倉さんの肩を後ろからそっと引く




 「・・名前、よもやお前まで私に逆らおうとするわけではないだろうね・・」


 「・・いえ、ただ私が入院中に溜まった私の任務があるのではないかと・・

  正月早々、申し訳ないのですが早速、案内していただけないかと思いまして」



 せいぜい、嫌味を込めてにっこりとほほ笑む



 「名前!待って!あんた何言うてんの!!」



 他に、選択肢はないのだから、仕方がない






 佐倉さんの手を取り、私のアリスストーンをその手に握らせる

 何を持たされたか分からないのは、佐倉さんが転校してきてからまだ1度もアリスストーン実習が行われていないから


 それでも、講義ではやったのだけれどねと心の中で苦笑い






 サクランボほどしかない小さな石

 それでも、上手く使えば佐倉さんの体からペルソナのアリスを取り出すのに役立つかもしれない




 小声でアリスを使う、リバウンド覚悟で


 「みんな、無事にここを出て」





***
**
*






 追いかけようとした

 それでも、怪我人だらけのこの場を離れるわけにはいかなくて・・



 グッと堪えるしかなかった

 名前の気持ちを踏みにじるわけにはいかないと自分に言い聞かせながら






 蜜柑を抱えて、花姫殿の地下を抜け出すと美咲と殿が立っていた

 2人も茨木のばらに言われてここまで来たらしい






 蜜柑の容体は一向によくない

 ここまで、抱えて走っている間も途切れ途切れの苦しそうな呼吸音が1分1秒を争う状況であることを皆に知らせているようで、全員の顔に不安の色が浮かぶ






 殿に連れられ、高等部の寮、総代表の櫻野先輩と潜在系代表の今井先輩のもとへと向かう

 今井先輩なら、蜜柑を救う方法が分かると考えて・・






 今井先輩が蜜柑の治療に当たる

 その時、不思議そうに蜜柑の手から何かを抜き取った




 「・・アリスストーン

  いったい誰の・・」 




 ふと、名前が去り際に蜜柑の手を握ったことを思い出す

 「・・名前のものかもしれねぇ

  だったら、その言霊のアリスを使って蜜柑を治せませんか」




 「やってみるが、彼女のアリスは特殊な制限が多い

  本人がいない状態でどこまで使いこなせるか分からん

  あまり、過剰な期待は寄せるなよ」




 結果、名前のアリスストーンの上手い使い方を思いつくことができず、今井先輩の応急手当のみが終わった





 同時に棗の妹の葵ちゃんを学園から逃がす作戦を決行する

 アリスでない葵ちゃんの存在をチラシにして学園の生徒たちに抗議を起こさせるという強硬手段であった



 しかし、日ごろから学園に対して不満を持つ生徒も少なくないこの状況が幸いして、何とか、葵ちゃんの治療と保護者のもとへ帰す約束をこぎつけることができた





***
**
*





 蜜柑の容体を心配して蛍が付き添っている

 疲れがたまっているのだろう、蜜柑の眠るベッドに突っ伏すように眠っている

 蜜柑の手に使い方も分からない名前のアリスストーンを握らせて、その手を自分の手で覆うように握りしめている




 「・・蜜柑、早く元気になって

  蜜柑を苦しめるアリスを取り出して・・」

 ぽつぽつと紡がれる、言葉は寝言なのに強い思いが込められているのを感じる





 名前のアリスストーンはグレーに少しピンクの混じったもの


 朝になって蜜柑の手には、この名前のアリスストーンの代わりに消えた蜜柑のシミと同じ色、闇色のアリスストーンが握られていた





 理由は分からない

 蛍の想いが名前の石に通じたのかもしれない




 未だ帰ってくる気配のない名前に確かめようもない・・


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[mokuji]




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