思ったほど、甘い。
敬語攻め×関西弁受け/ギャグ/下ネタ有
「なんでやねん」
憎々しげに呟くと、目の前の優男(風)は爽やかな笑みを浮かべて「えー」と言いおった。
全っ然不満そうに見えん。むしろごっつ嬉しそう。
「なんでですか?なんでダメなんですか?」
「や、ダメに決まっとるやろ、なんで俺が、お、れが……、」
後の言葉が声にならない。
コイツはさっき、なんて言った?
「好きです。付き合ってください」
「同じことを二度も言わんでええわボケナスう!」
気ん持ち悪!と粟だつ皮膚を手で押さえ、我が身を抱き締める。
「色々間違ぉとるぞアホ」
「なにも間違ってません、俺は貴方が好きです」
やーめーろー!
よぅ聞いとれよ、俺は男やん。どう見ても誰が見ても百発百中、十人が十人「男」わかる姿やん。どこが女に見える!?言ってみい!
「いや男だってわかってますよ?」
「……頭おかしい?」
「おかしくなんてありません。至って健康です」
「じゃ、なんで、」
男のお前が、俺に……?
続きの言葉を飲み込んで、俺はじっくり男を観察した。
「……そんな見られると恥ずかしいです」黙っとれや。
どう見たって目の前の人間は男にしか見えない。むしろイケメン言われるくらいには美形だし、俺よりも背えも高そう。
俺の目が腐ってなければ、間違いなくmanの方だ。
……もしかしたら。もしかしたら俺の目ぇがこの暑さで腐ったんかもしれん。
「お前、性別は」
「男です」
うん。
「うおおおお!やっぱりかいいいい!」
知っとったよ!知っとったけど目を逸らしたい現実ってあるやろ!
「ホモ!ホモか!えんがちょ!」
「いや、貴方だけです。男を好きになったのは」
「嬉しくねー!こんな嬉しない告白人生初めて!」
「……と言っても初恋が貴方なので、実は強く否定できなかったり」
「それもっと重要なカミングアウトやん!」
初恋が俺って、接点もなにもないのに言われてもただの電波にしか見えんだけど。
「じゃあホモかもしれへんよ」
「それでも貴方が好きです!」
「俺は嫌いや!」
「貴方にしか勃ちません!」
下ネタやめろおおお!
バシーンと頭を叩くと、奴は嬉しそうに笑った。
ホモな上にマゾか。ほんま救いようないわこの残念なイケメン。
と、イケメンが俺の両手を壊れ物を扱うみたく両手で掬い、顔を近付けてきた。
ぞわわ。(鳥肌)
「なっ、なんやねんお前!ほんっとウッザイわ!」
「貴方を見た時からずっと、触りたかった」
「うわあキモい」
「好きです、貴方が」
ちゅ、と両手の甲に口付けされ、かっと顔が赤くなるのがわかった。
俺だって怒る時は怒る。
今がその時だ。……なのに、
「なっ、は、え、」
俺の無能な喉は引きつってまともな音を奏でない。無能な口は、思った言葉を吐き出そうとはせずぱくぱく開閉するだけ。
使えへん。ほんま、使えへん。
「……あかん、やろ」
「何がです?」
「男同士やし、」
「愛に性別は関係ないです」
「初対面やし、」
「俺は初めてじゃないです」
「……俺は好きとか、そういうのないし……っ!?」
突然視界が黒くなり、背中に腕が回された感触。
あ、抱き締められたな、と気付いたときには悲鳴が上げられないほどきつく胸板に押しつけられていた。
「貴方が好きになってくれるまで、俺は貴方から離れません」
それはさながら、婚約の誓いのように。
「……っやめろおおおおお!!!!」
これは、俺が彼に落ちるまでの話。
うわ、めっちゃ不本意。
* * *
お気に入りです。とても。
2011,0716.