スウィートムードメイカー



俺様社長×強気高校生/失声症/甘甘


彼は大概俺に甘いが、

俺も相当甘いらしい。



スウィートムードメイカー



近くにあった机を叩き、ふてぶてしくデスクに座って仕事をしている野郎を呼んだ。
彼は椅子に座ったままくるりと体をこちらに向け、方眉を上げて見せる。

「……おい、ンな激しく叩かんでもわかる。机を大破させるつもりか」

あ、いけね、興奮して思わず。
それをどうとったのか、彼はわざわざ立ち上がって俺のいるソファーまでやってきた。仕事はいいのか。
俺の隣に座ると、大きな手で頭を撫でてくれる。

「ちゃんと聞こえてるから、安心しろ」
『わかってる』

俺をここに連れてきた時、言ったじゃないか。
……でもな、俺が伝えたいのはそんな事じゃない。そんな分かり切った事実じゃない。

『真剣な話しなんだが、』
「どうした?」
『俺さ、大学行って就職するよ』
「!」

彼の目が大きく見開かれる。
え、ええ。そんな驚く事?普通の学生はみんな通る道なんだけど。

「普通、な。お前は違う」
『いやまあ、そうなんだけど』

と言葉を伝えていた手の平をじっと眺める。
不自由だとは思わないし、ガキみたいに喚かない。
今更だ。

「俺がお前を死ぬまで養ってやるっつってんだろ。全部俺に任せろ。不自由なんかさせない」
『俺はヒモか』

やだよヒモなんて。
なにが悲しくて彼氏にたからなくてはならないのか。

「それでも構わない」
『いや俺が構うから』

反論すればするほど彼は顔をしかめる。

「なんだ?なにか不満でもあるのか?」

むしろないから困るんだ。
囲われて大事にされるだけなんて、俺が黙ってると思ってんのかこの野郎!

『このままじゃいけないんだよ。俺も何かしたい、何かしなきゃいけ』

怒ったような顔の彼にがしりと両手を捕まれ、俺の言葉は遮られる。手がなかったらどうしろと。

「……、……っ、」

声がでないとわかっていても、俺は口を開く。
まあ、彼には言いたいことはわかるだろうけど。

「、っ、」
「――っわかったから。無理するな、痛める」

観念したような声と共にぎゅっと抱き込まれた。
彼が俺に甘いのは承知している。決して否定するようなことは言わないから。

「なんの仕事に就きたい」

耳元で問われる。
あ、許してくれた。思わずふはっと息を漏らして笑う。
彼の背中に腕を回して、背中に一文字ずつ指で書いていく。

ふ、く、し。

「……福祉?」

体を放して俺の顔を覗きこむ彼にこくりと頷く。

『俺と同じ人達を手助けしたい』
「……本当にお前は……、」
『ちゃんと勉強もする。諦めない。少しでもいい、お前の役に立ちたい』
「俺がやめろと言っても、聞かないだろう」

おや、よくおわかりで。
うんと頷けば、キスされた。
あれおかしい文脈が繋がらない。

『なんだよ』
「好きだ」
『いきなりなに告白してんだ、気持ち悪い』

フッと彼は笑う。
両手で顔を挟まれ、顔中にちゅっちゅされた。
なになんなの、俺はなんのスイッチ押したの。

「……いや、お前だから好きになったんだろうと思ってな」
「……っ」

な、な!ここぞとばかりに笑いやがって!
ふざけんなふざけんな!

「顔、赤い」
『うっさい』
「なあ、ミツキ。ベッド行こうか」
『調子こくなよ』

ソファーから蹴り落としてやった。


* * * 

すいません本当に突発的に書きたくなったシチュでした。
お題はなばか様よりお借りしました。
2011,0708.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -