しょーとしょーと という名のメモ |
▼ 「なぁ、この中で昨日遊々と連絡とった人いる?」 ココはとあるスタジオの控室。 新曲のパート分けなどの打ち合わせでsu-Alメンバーが集まっていた。 いつもぎりぎりでくる悠斗がいつも通りぎりぎりでスタジオ入りして、そこで遊々が来ていないことに気が付く。 いつもは三番目くらいにきて、皆にお菓子とか配ってたりするのに、遊々が遅刻なんて珍しいな、なんて思ってると基が少し焦ったような表情で控室に入ってきては、冒頭の台詞を放った。 「俺はとってないですね…」 眉を下げた正樹が心配そうな声を出す。 他のメンバーも連絡を取っていなかったらしく首を横に振っていた。 「岬は?」 「いや、俺もしてない、一昨日はメールして返事返ってきたけど」 そう俺が言うと、基は片手に持っていた携帯で遊々に電話を掛けるが出ないらしくため息をつきながら電話を切った。 話を詳しくきくと、一昨日の夜、基が今日の事で話があり遊々に電話をしたが出なくて、そのあと何回も掛けたがやはり出ることはなかったらしい、今日になってからも連絡はなく、スタジオにも来ていないとのことだった。 遊々は連絡を無視するような奴ではないことは分かってるし、その時出れなくてもそのあとは必ずかけ直してくる、それは皆が分かっていることで、ゆえに遊々に何かがあったのではないかと不安になる。 俺はポケットからスマホを取り出して遊々の番号を呼び出し掛ける、出ないとわかっててももしかしたらと。 長い呼び出し音の後に、ノイズ、留守番電話への切り替えかと思って耳を離しかけるが様子が違う。 微かに聞こえる呼吸音と掠れた声。 「遊々?」 『――――っ、もしも、し……み、さき……?』 「基、遊々出た、車出して、何回も電話したけど気づかなかった?今家?」 『ご、めん……家、だよ……』 「今から行くから」 一方的に電話を切って基と共にスタジオを出た。 ◇ ぶつりと音をたてて電話が切れる。 岬、怒ってたかな、皆にも迷惑かけちゃったな。 正直昨日岬にメールを返してからの記憶が全くない。 ちょっとふらふらするな、なんて思ってたら案の定アウトだったみたいだ。 机から落ちた携帯がちょうど僕の頭に落ちなければ、さっきの電話に気が付くこともなかったかと思うと少しゾッとした。 もう少ししたら、基さんと岬が来るのだろうか…。 玄関くらい開けておこうかとおもうが、体が言うこと聞かなくて少し浮いては床へと逆戻り。 基さんに万が一の合鍵を預けてあった気がするから大丈夫かなとか、怒られちゃうかなとか、そう考えてはまた意識は落ちていく。 遠くで鍵の開く音がした。 ◇ ぴーんぽーん 「出てこないな」 「声からして相当具合悪そうだったし」 「そういえば、遊々から合鍵預かってた、万が一って時にって」 「はやく出せよ」 ガチャリと音をたてて鍵が開く。 「入るぞ」と声を掛けて室内へ入る。 無駄に広い廊下を進んでリビングへ、ソファの陰に見慣れた金色の髪。 「基こっち、やっぱだめだったっぽい」 「あー、今車持ってくるわ」 「はやくして」 ◇ 近くで声がして重い瞼を開ける、ぼんやりと人の影が見えてだんだんとはっきり映っていく。 薄い茶色の髪がはっきりと見えたかと思うとぱちんと軽く頬を叩かれる。 「み、さき……いたい……」 「遊々お前どれだけ心配かけさせんの?」 「ごめん……」 「丸一日連絡取れなくて基すごく心配してた、挙句の果て連絡取れたと思ったら部屋で倒れてるし、もー……」 「いちにち……?」 「昨日電話でなかっただろ?朝から」 「だって、昨日、みさきにメールかえした、よ?」 「遊々、倒れたのいつ?」 「昨日、みさきにメールかえしてからすぐだった、かな」 「はー……」 「え、?」 「遊々、俺とメールしたのは一昨日だよ」 「ということ、は……」 「丸一日床で倒れてたってこと」 「ごめん……」 「もう、ばかだな……」 |
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