第78χ 魔眼探偵、海藤瞬A




彼の推理による事件の全貌は次のようになる。
松崎が学校を出た後、犯人は現れてガラスを割って、校内に侵入。そして、校長室の壺を盗み出した。

みんな、彼の推理にぽかんと口を開いている。それもそのはず。そのくらいの推理なら誰でも思いつくからだ。それで解決していないとなると、他に理由があるはずだ。是非とも魔眼探偵にはそのところを見抜いて欲しいものなのだけれど。

「海藤くん、それはわかったけど...それじゃ矛盾することがあるよ。」

私はガラスが散らばる付近にしゃがみ込むと、散らばった破片を指差した。海藤くんは未だにわからないのか不思議そうに私を見ている。

「そうか、平凡さん。破片の散らばり方だね!」
「あー!そっちね!?そこも気になってた、確かに!!」

流石は灰呂くん。学級委員をやるだけのことはある。それに対して魔眼探偵は...どこかの探偵漫画の居眠り探偵の様だ。
彼が気づいた様に、散らばった破片は中ではなく外側に散らばっている。普通外から侵入したのなら、外側にはガラスは散らばらないはず。このことにより魔眼探偵の推理はハズレということになった。

それならば一体誰の仕業だというのだろうか。
更に入って来た情報によると松崎先生は校長先生に呼ばれて、ガラスを割ったのは自分ではないと証言しているらしい。壺に関しては何やら黙秘している様だが。

そこにやって来たのは高橋くん。何やら手に持っている様だけれど...あの形はまさか。

「...その手の怪我、どうしたんだ?」
「ちょ...ちょっと切ったんだよ!!」

明らかに動揺しているところ、何らかしらやらかしたのだろう。彼らはいつも過ぎるところがあるし。
すると突然、海藤くんは何かわかったかの様に高橋くんを指差してこう告げた。

「犯人はお前だー!!」

彼は続けてこう口にした。彼の手の怪我はガラスの破片で切ったと。
高橋くんは昨日、松崎先生に説教されてそのことを恨んで、その夜ある復讐計画を実行に移した。その復讐とは壺を盗み、松崎先生に罪を着せる事。
そして、高橋くんはガラスの破片に細工した。一度外から窓ガラスを割った後に内側に散らばった破片を外から出した。内部の犯行に見せかけるために。

「お前の手の怪我はその時負ったモノ!!そして何よりお前を犯人と決定づける証拠...お前の持ってるその袋...!!それはどう見ても壺じゃないかー!」

海藤くんにしては中々の推理だと思う。私も推理ドラマを見ている様でほんの少しだけワクワクしてしまった。
しかしながら、結局高橋くんは壺は認めても硝子戸については認めることはなかった。

壺の真相としては、海藤くんの推理が一部当たっていて、高橋くんがむしゃくしゃして壺の置いてある台座を蹴ったために割ってしまったとのこと。手の怪我はその壺を直すために負ったモノだという。
それではなぜ硝子戸は割れていたのか...。

「...楠雄くん?何か思い当たることがあるの?」

みんなが解散して静まった昇降口。楠雄くんはガラスの破片を手にしゃがみこんでいた。私は彼の隣に同じ様にしゃがみ込んで表情を窺えば、ピクリと眉が動いた。...犯人はどうやら彼らしい。

どうやって割ったかは彼が話さない限り知ることはできない。だから、私も摘発するつもりはない。むしろ、このまま迷宮入りが無難なのだろう。

「とりあえず、そろそろ授業始まるし教室行こう?」

お昼休みに証拠口を通ると硝子戸は何事もなかったかのように綺麗に修復されていた。こうして、魔眼探偵の初仕事は一部解決することで幕を閉じた。
彼もすぐに飽きてしまった様で、次の日には漆黒の翼として活動していた。





*まえ つぎ#
もどる
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -