第77χ 美少女×超能力者×一般人(後編)A




施設の中に入れば、平日の夕方にも関わらず人で溢れていた。

照橋さんはインフォメーションマップを見ながらどこにしようか悩んでいる。私は何でもいいのだけれど...照橋さんと二人でぼんやり眺めていれば、楠雄くんは既にやる気満々にボーリング場に向かってしまった。まぁ、私もしばらくまともに運動できてないから丁度良いかもしれない。

一方で照橋さんは浮かない顔をしている。ボーリングは好き嫌い別れるものだし、仕方ないと思うけれど...もしかして楠雄くんはそれを狙ってボーリングをしたのだろうか。
いや、それはないだろう。そんな心の声を聞けるわけじゃあるまいし。そんなことできたら楠雄くんは超能力者...。

ふと頭に引っかかりを感じて、その謎を探ろうと必死に記憶を辿ってみても、一向に答えを見つけることができない。違和感の気持ち悪さにモヤモヤとしていると私の投げる番になってしまった。
せっかくここに来たんだ。今はこれを楽しむことにしよう。私はモヤモヤを吹っ切るようにピンに向かって勢いよくボールを投げた。

結果は楠雄くんのスコアは279、私は120、照橋さんは59だった。久々にしては中々できた方だと思う。
照橋さんは久々だと言っていたし、それにあった点を取っていると思う。それにしても楠雄くんは...スコア表にはストライクが綺麗に並んでいる。普段、学校では平均にいる彼がここまでやるなんて。彼は単にボーリングが得意なのか...もしかしたら爪を隠す鷹なのかもしれない。

ボーリングの次はゲームセンターにやって来た。
ゲームセンターは先日、燃堂くん達とやって来たけれど、ここは遊んだゲームセンターと異なって、ユーフォーキャッチャーや音ゲーなど今時の機種が多数取り揃えられている。お店によってこんなにも個性が出るのだと少し驚いてしまった。滅多に来ることのない場所だからそう思うのかもしれないけれど。

「ゴリラビットのぬいぐるみだってー!ねぇ、斉木くんはこういうの得意...って、アレ!?」

楠雄くんはゴリラビットには目もくれずにゲットして来たのは美少女フィギュア。取り出したフィギュアを嬉しそうに見つめている。照橋さんはその光景に衝撃を受けたようでトボトボと違うゲームに行ってしまった。

「へぇ...楠雄くん、そういうの好きなんだ。少し意外だったかも。」

私も横から取ったフィギュアを見つめていれば、楠雄くんからずいっと押し付けられてしまった。そんなわけないだろうと言いたいのか。私に渡されても困るのだけれど...そのまま返すわけにもいかないし、かさばるフィギュアを鞄に詰めて二人の後を追った。

その後も、格ゲー、卓球、ダーツと様々なゲームで遊んでみたけれど、楠雄くんは容赦なく照橋さんをねじ伏せてゆく。楠雄くんはボーリングに限らず、もしかしたらこういうゲーム全般が得意なのかもしれない。まさかゲームになると彼のもう一人の人格が現れて...漫画の読み過ぎかな。

全てを終える頃には照橋さんの瞳にはいつもの輝きがなくなり、疲れ切った表情をしていた。確かにあんなにコテンパンにされたら誰だってそんな顔になると思う。

「撮影無事終わって良かったねー。」

ようやく帰宅ムードになったところ、背後から聞こえて来たのは聞き慣れた信さんの声。
これはまずい、見ればスタッフの人と一緒にいる。ここでバレては今までやって来たことが水の泡になってしまう。
私は楠雄くんに目配せすると、ある行動に出た。

「きゃー!六神通さんですよね!私ファンだったんですっ。こんなところで会えるなんてサインください!」

一般人を装って信さんの足止めをする事。以前も沖縄旅行でも使った手段だ。なるべく周りに聞こえるように言ったから、すぐに人集りができた。スタッフも信さんから照橋さんと楠雄くんを追えと命令されていたみたいだけど、二人をかまっている暇はなさそうだ。照橋さんは楠雄くんに任せたし...正直複雑だけれど。今はこの方法しかない。

信さんは人混みができると、逃げるようにスタッフ達と帰っていった。自由に行動できない芸能人も中々大変だと思う。

さて...目的は果たせたし、二人を探してウロウロとしていれば、すぐに楠雄くん達と合流することができた。照橋さんは顔を真っ赤にして手には何か持っている。あれは...プリクラ?
私が必死に食い止めているところ二人で呑気にプリクラなんて!私も一回撮ったけど...。

楠雄くんをジト目で見つめるとやむを得ないと視線を逸らされてしまった。楠雄くんから美少女フィギュアをもらったしそれで許しておくことにしよう。

今日のことで私も流石に疲れてしまった...もう、金輪際照橋兄妹には関わりたくないものだ。

The END





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