第66χ 人の縁とはまこと奇怪なりA




「あっ、学校にはもう慣れた?窪谷須...くんだよね?」
「おっ...押っ忍...!」

たまたま通りがかった照橋さんの顔を見るや否や、窪谷須くんは真っ赤にして口をパクパクと開閉させている。どうやら照橋さんの魅力はヤンキーまでも虜にするらしい。おかげで先程までの鬼の形相が嘘のように消え去っていた。

「私、同じクラスの照橋心美。覚えてくれたら嬉しいな。」

照橋さんはウインク1つ飛ばすとスタスタと去って行ってしまった。同じ同性として悔しさを感じないといえば嘘になる...けれど、照橋さんおかげでなんとかこの場を収めることができそうだ。

「窪谷須くん...そろそろ教室戻ろう?」

照橋さんの背中をじっと見つめたままぼんやりする彼に一声かけると、再び教室に向かって歩き出す。

「気合だァ!!出来る出来る!!限界を超えろォー!」

ようやく教室までたどり着いたのはいいが、教室の目の前では灰呂くんのトレーニングが行われていた。わざわざこんなところにいなくてもいいのに。
一通りのトレーニングが済むと灰呂くんの周りには人集りが出来ている。彼がいかに慕われているかが目に見てわかる。周りは全員男子だけども。

窪谷須くんが灰呂くんとの挨拶を交わしている間に、私はこっそりと教室に戻って自身の机に着席する。普段は聞き役に徹しているのに、今日は話し役側にいたせいですっかり疲れてしまった。

ぺたりと机に頬をくっつけて楠雄くんを見つめれば、よくやったと親指を立ててGJとジェスチャーをしてくる。褒められるのは嬉しいけど二度とこんな役を買いたくはない。

「このお返しは魔美のコーヒーゼリーでいいからね。」

楠雄くんはその言葉にギョッとしたような表情をするも、渋々頷いてくれた。本当なら私の方が楠雄くんに色々お返ししなければならないところなのに...楠雄くんの優しさに思わず頬が緩みそうになる。

疲労感も少し和らいだところで小説でも読もうかと身体を起こすと、なぜかみんなぞろぞろ集まってきて私達の周囲は一気に賑やかになった。

「おっ、相棒に平凡。今日もラーメン食いにいこーぜ。」
「α計画は順調か斉木...平凡もいつダークリユニオンが来るかはわからない。油断するなよ。」
「チーっス、斉木さんに仁子ちゃん。遊びに来たッスよ!」
「斉木くん、平凡さん。今日も天気がいいねっ。」
「やぁ斉木くんに平凡さん、今日も熱く諦めずいこう!」

始まりは一人だったのにいつの間にかこんなにも周りに人が集まるようなった。これも多分楠雄くんのおかげだと思う。人の縁とは不思議だとよく言ったものだなんて考えながら、ペラリ小説のページをめくってゆく。

「...もしかして、お前達二人は裏番、なのか?」
「そんなわけないよ、みんな普通の友達だよ。勿論、窪谷須くんもね。」

オロオロとしながら近寄って来る窪谷須くんに思わずフッと笑いをこぼしながら首を振れば、窪谷須くんも何だか嬉しそうに笑っている。

「改めまして...私は平凡仁子。これからよろしくね、窪谷須くん。」
「平凡だな。初日は脅して悪かったな。これから夜露死苦!」

こうして私の周りにまた1つの縁が生まれました、とさ。





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