第51χ 漆黒の翼のママは教育ママ@




「...二人...いや、三人か...ソコソコしてないでいい加減出てきたらどうだ...?」

いつものように下校時に4人で寄り道をしているところ、ふいに呟かれた海藤くんの言葉にお?と振り返るも、周りにそのような気配は感じられない。相変わらず海藤くんの中二病は止まることを知らず、順調に悪化の一途を辿っているようだ。

「気にするな、こっちの話だ。俺の周りを嗅ぎ回っている奴がいてな...まぁいつもの事だ。」

気にしてほしくないなら呟くなと言うのは流石に可哀想なのでやめておこう。一応この残念なところが彼の可愛いところでもあるし、私としても嫌いではない。勿論、好きということも断じてないのだが。きっと彼から中二病を取り去ってしまえば、海藤くんではなくなってしまう。つまりは、中二病こそが彼のアイデンティティということだ。
普段も家では彼はこんな感じなのだろうか。彼のご両親含めて少し気にならなくもない。

「あら、瞬くん今帰り?奇遇ね、私も今帰って来た所よ。」
「お...おかえりなさい...ママ...!」

前方から歩いた女性から突然声をかけられたと思えば、それは海藤くんに向けられていた。噂をすれば影というのはまさにこういうことだろうか。
そう言えば海藤くんの名前は瞬だったっけ?海藤くんもママと呼んでいたことから、この人が私の噂になって居た海藤くんのお母さんなのだろう。
息子も美形だと思っていたけれど、どうやらそれは母親の血を見事に継いだ結果らしい。キャットアイの眼鏡を着こなすなんて美人にしかできないことだ。

「あら、お友達かしら?すぐ近くなんだから家でお茶でもどうかしら?」
「えっ!?いや大丈夫だよ!!ほ...ほら彼らも忙しいし...そうだよな?!」

露骨に動揺して家に招きたくない様子の海藤くん。これは益々家での彼の様子が気になってしまう。ニッコリ笑みを浮かべながら首を横に振ってみせる。海藤くんの顔が見る見る青ざめて行くのが目に見えてわかった。
ごめん、海藤くんの事情より君がどうして過ごしているのか気になってしまうんだ。今回は許してほしい...悪いようにはしないから、多分。
幸いにも、燃堂くんも楠雄くんも暇なようで一緒に向かうこととなった。楠雄くんはどちらかと言えばおやつのコーヒーゼリー目的な気がするけど、そのことは今はどうでもいいことだ。

おばさんに招かれて家にたどり着けば、そこは一般家庭とは程遠い大きさの家で、思わず目を見張ってしまった。楠雄くんの家も大きいとは思っていたけど、それを圧倒的に超えている。益々、彼の素顔がどのようであるか気になってしまう。
ウキウキと心弾ませながら、私達は海藤くんの家へお邪魔させてもらった。





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