第59χ 常夏の楽園-Sunshine Crazy- III @




前回のあらすじ
目が覚めたらホテルが消えていた。

恐らくこの消失事件の原因は僕だ。しかし、普段ならこんなこと絶対に起こり得ない。なら、なぜこんなことが起きてしまったか...それは制御装置がなくなってしまったからだ。僕は制御装置なしには自身の力を抑えることができない。抑制できない力が暴走したらどうなるかは僕にも未知数だ。

「斉木さん!!どうなってるんスかコレ?!つーかホテルの中の人は...!?」

先程から僕の耳元で騒がしい奴は鳥束で、コイツは女子に告白するために外に出ていたから、一緒に消失しなかったようだ。どうせなら一緒に消失して欲しかったのだが。

チッ...今は無駄なことを考えている場合ではない。とりあえず今の最優先はホテルを元通りにすること。
サイコキネシスで吹き飛ばしていたなら僕にもどうにもできないが、ホテルが消えた箇所の切り口が綺麗すぎる。きっと転移系の能力で別の空間に飛ばしてしまったに違いない。これなら何とか戻せるはずだ。

「斉木さん!!底の方に何かありますよ!!」

鳥束の言葉を信じて、超能力を使ってそのものを引き上げてみる。空の彼方に飛んでいかぬよう力を調節するのに中々苦労する。
ゆっくり引き上げて出てきたのは無数の骸骨と大きな木造の船。年代からして相当前に作られた代物だろう。
これがここにあるということは...これはただの船じゃない。ホテルの同価値の財宝を載せた沈没船だ。これとテレポートで入れ替わったのならホテルは今...海だ。

場所がわかったのなら話は簡単だ。
この船とホテルを入れ替えて、1日前に戻してやればいい。ここでも力加減は大変だが、何とかできるだろう。それより、誰かが気付く前に戻さなければ。
僕は船に触れると能力を使ってテレポートを行う。そして戻ってきたホテルに再度触れると、1日前に再生させた。

「アレ?!何...エェ!?...どっへぇー・・。」

鳥束が驚きのあまり声にならない声を上げているがそんなことはどうでもいい。何とか気付かれずに戻すことができたようだ。やれやれ...危ないところだった。

「スゲェ、一瞬で...これにて一件落着っスね。」

いや、まだだ。制御装置を抜いたのはお前だろう。これを戻さない限り一件落着にはならない。催促するように鳥束の方へ手を差し出すとキョトンと僕を見るばかり。しかも、無くしたのかとシレッと言う始末。仕方ない...脅迫気味に再度問いかければ、どうやら本当に知らないようだ。だとしたら、一体誰が...。

「心美ちゃんと仁子、帰ってこないなぁ。消灯時間過ぎたのにやばくない?」
「先生に言った方がいいと思う。ちょっと先生のところ行ってくる!」

テレパシーで聞こえてきたのは夢原さんと同室の女子の会話だ。この会話から間違いない。照橋さんが制御装置を持ってどこかに消えたのだ。平凡さんは熟睡していたようだし、その可能性は低いはずだ。

...平凡さんも...いない?
ハッと振り向いてビーチチェアを確認しても彼女の姿は見当たらない。僕が照橋さん共々消してしまったのだろう。これは厄介なことになりそうだ。
いや..落ち着け、僕。二人なら千里眼で探した方が早い。寄り目になって千里眼を作動させる。鳥束が何顔がと煩いがそれどころじゃない。彼女達は一体どこだっ。

...いた、照橋さんはどこかの森に飛ばされてしまったらしい。良かった...無事のようだ。しかし、平凡さんはその周囲には見当たらない。照橋さんとは違うところに飛ばしてしまったのか。

「きゃあああっ!」

やっぱ無事じゃなかった!!照橋さんは大きな熊に襲われる寸前だ。とりあえず先に見つけた照橋さんをどうにかするのが先だ。
僕が見つけるまで無事でいてくれ、平凡さん...っ!





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