第55χ 運命のドローくじ!A




「斉木くんがダメなら海藤くんに私が頼んでくる!」

こんな時に先行して行動してくれる知予ちゃんの行動力は尊敬に値すると思う。そうとなったら...教室の中を探してみたけれど、海藤くんの姿は見当たらなかった。修学旅行なんて下らないとか言いながらトイレに避難でもしているのだろう。内心は楽しみで仕方ないくせに。中二病とはそう言うものだ。

「今度は私が燃堂くんに頼んでみるね。ちょうどあそこにいるし。」

そう告げると照橋さんが燃堂くんのもとに向かって行く。確かに他に頼めるのは燃堂くんのみにはなったけど...何となく照橋さんと燃堂くんって不思議な感じがするのは私だけじゃないはず。千代ちゃんもハラハラした様子で照橋さんを見ているし。

「俺らと一緒に行こーよ!親戚が沖縄住んでっから案内出来るよ!」
「いやいや、オレなんか沖縄に住んでたから!」

声をかけようとした照橋さんを妨げるように男子達が取り囲んできた。想定内のことだったけれど、囲まれるのはどうも落ち着かない。挙げ句の果てに周りはなぜかB◯GINの知識競いあっているし。刺そう気がないなら退いてほしいのだが。

「らちがあかないな...仕方ない。」

私達に見兼ねて救い船を出してくれたのは学級委員である灰呂くん。結局、男女の組みはくじ引きによって決められることとなった。

私の班では照橋さんが引くことになったけれど...残念ながら、私達の組みは高橋くんの班になった。残念と言うのは少し高橋くんに失礼かな。けど、知予ちゃんと照橋さんが想像以上に落ち込んでいるから仕方ないね。

一通りくじを引き終えてようやく班が決まり、HRが終わりかけようとした刹那、異議を申し立てる声が教室に響いた。

「燃堂の班とか超無理なんだけどー!!」
「うわーもー超最悪ー。」

キツイ目をした女子と、今は絶滅危惧種であるガングロ女子が不満そうに引いたくじを見せつけてくる。名前は...私も知らない。けれど、彼女達の言葉に私は無意識に立ち上がっていた。

「その言い方、ないと思う。燃堂くん達に失礼だから。」

ハッと気付いた時には引けないところに来てしまっていた。クラスのみんなも何事かと視線が私の方を向いている。その恥ずかしさにぎゅっと握る拳が強くなる。
彼女達ははぁ?と素っ頓狂な声を上げた後にクスクスと笑い出しているし。何だか...悔しくて、悲しくて唇をキュッと噛み締めた。

「私達が替わります。燃堂くん達がよければだけど...」

照橋さんの一声に賞賛の声が教室中を飛び交っている。何とかこの場はうまく収まったらしい。私は早足で自席に戻れば机の上で突っ伏す。
ゆっくりスタスタと私の方へ歩いてくる足音が聞こえて、恐る恐る顔を上げてみれば燃堂くんが目の前にいた。

「よくわかんねーけど、オレっちのために怒ってくれてありがとな。」

ニカッと笑みを見せた燃堂くんに安堵する自分がいる。彼のこういうところが私は好きだしホッとするんだよね。だからこそ、彼女達の言い方が許せなかった。

チラリと様子を窺うように楠雄くんを見れば、やれやれと言う表情を浮かべている。嫌も何も決まったところを今更覆せないと言ったところだろうか。
不意にこみ上げた羞恥心に私は再び机に突っ伏した。

「お?平凡、大丈夫か?」

来週はいよいよ修学旅行。
いい思い出たくさんできるといいな。





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