第100χ サブリミナル100 A




「いやー、ほんとラッキーだったな。」
「おお!」

海藤くんの手には最新機種のゲーム機、燃堂くんの手には新品のスニーカー。彼ららしいチョイスだと思う。
残念ながら、私も自分の分を選ぶのに夢中になっていて楠雄くんが何を選んだかはわからない。さほど大きくない紙袋に入っていることから、家電の類ではないことだけはなんとなくわかった。
ちなみに私のも秘密だ。

「オイメガネ!!」

バスト100のオバ...お姉様に絡まれながらみんなで帰路を歩いていれば突如聞こえてきた罵声。
振り向かなくてもすぐにわかる。この声の持ち主は...変態だ。

「ここで会ったが百年目だぜ!」

こちらとしてはまったく会いたくはなかったけれど、良いことがあったばかりだから悪いことが起きても仕方ないと受け止めるしかない。

変態こと長人気俳優であり、照橋さんの兄である六神通は楠雄くんを見るなり罵声を浴びせたり、照橋さんを大絶賛したりで、落ち着く気配がない。

彼は楠雄くんに対して敵意剥き出しだけれど、そもそも楠雄くんはほぼ絡まれる側の人間だ。だから、その敵意は楠雄くんにとったら理不尽の何ものでもない。
まぁ...思っていても私は部外者であるから口を出すことはできないけれど。私はいつだって楠雄くんの味方だ。

「相棒いたいた。なにやってんだありゃ。」
「え?!あ...あの人は!!もしかして俳優の...百神通さんですよね!?」

先をスタスタ歩いていた海藤くんと燃堂くんが戻ってきてくれた。
人気俳優を前にして燃堂くんはあまり興味がないようだ。私と同じで人気俳優とか疎そうだし。しかし、一方海藤くんは緊張して名前を言い間違えるくらい興奮している。

それもそのはず、彼は一時六神通が主演を務める魔眼探偵ジョーカーにドハマりして、なりきりまでしていたほどだ。詳しくは第78χを参照してほしい。

海藤くんは余程六神通に会えたことが嬉しいのか、次々にリクエストを出して行く。図々しさを見せる海藤くんもアレだけれど、六神通も彼に言われるままに次々に演じ分けてゆく。
変態であれど、流石人気俳優だ。ファンのリクエストにも嫌がらず応える姿に少し尊敬の念を抱いてしまうほどだ。

それにしても何とレパートリーが多いのだろうか。
魔眼探偵ジョーカー、百百百蔵、百瀬、百舌...ん?何かおかしい。

「...百?そうだ、百!」

ポンと手を叩きながら呟くと、横にいた楠雄くんがコクコクと頷いている。彼が感じていた違和感はどうやらこの『百』というキーワードだったようだ。
だからとて、私達には関係ないことで。モヤっとしていたことが解けてスッキリ感を味わえたということだろう。

「さて、スッキリもしたことだし帰ろうか。お腹も空いてきたことだしね。」

背後で海藤くんのリクエストに応えて演じ続ける六神通を置いて、楠雄くんと二人で家に向けて歩き出す。

「そう言えば楠雄くんは百貨店でなにを買ったの?」

ふと視界に入った彼の白い紙袋に視線を移して問いかけるも、秘密と言うように少し口元に笑みを浮かべながら人差し指を唇に押し当てる楠雄くん。

その表情に私の鼓動がドクンと強く脈打ったのがわかる。顔も熱もどんどんと熱くなってゆく。
私の反応に今度は楠雄くんが小さく首を傾げ返してきた。
何でもないと彼に顔の赤みがバレないようにドンドンと彼の前を歩いて行く。

そういうのは反則だよ、楠雄くんっ!





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