第20χ 人目の網から掻い潜れ!@




ようやく本日の締めの授業を終えて、テキパキと教科書やノートをカバンに詰めて教室を出る。

今日は欠かさず見ているアニメ、すこやか戦隊スペシャライザーの最終回が放送されるからだ。内容は、地球を侵略しに来た地球外生命体と戦うヒーローを描いたよくある戦隊モノだ。ありふれたストーリーだが、主人公の前向きな姿勢と悪役を倒す時の技が奇想天外なところを高く評価して、放送開始からずっと見続けてきた。そんなスペシャライバーとしては、絶対にリアタイは死守したいところ。1秒足りとも遅延は許されない。

下駄箱までの廊下を歩いていると、廊下の角で海藤くんがウロウロとしている。誰かを待っているように見えるけれど、なんでウロウロしているのかなどと話しかけると面倒くさいことになることは目に見えているので、見つからないように気持ち足音を殺して過ぎ去ろうと試みる。が、そう簡単にうまくはいかない。

「あ、平凡。斉木見なかったか?」
「楠雄くん...?まだ教室にいたような気がするけど。ごめん、ちょっと急いでるから。」

どうやら目的は私ではないらしい。ほっと息をついて海藤くんの横を通過していく。海藤くんのことだからダークリユニオン関係なのだろう。
一瞬、海藤くんがもう一度口を開こうとしていたが、すかさず一言追加したのが功を奏したか、そのまま閉口してくれた。危なかった...。

その後も燃堂くん、灰呂くん、そして照橋さんにも楠雄くんを見なかったかと聞かれたが、すべて海藤くんと同じように対処して通り過ぎて行く。

ようやくたどり着いた下駄箱。靴を履き替えようと手を伸ばすと、ふと今日の宿題をするためのノートを忘れたことに気付き、足早に自身の教室へ。
まだ1時間あるし、30分あれば家にたどり着けるが、万が一誰かに邪魔されてはテレビを見過ごしてしまう。
自身の机から必要なノートを取り出してカバンの中に入れる。念のため他に忘れ物がないことを確認して、私は再び下駄箱へ向かった。

教室を出れば、今度は楠雄くんがウロウロと廊下を彷徨っている。

「...楠雄くん、さっきからウロウロしてるけどどうしたの?」

恐る恐る声をかけてみれば、とてつもなく嫌な顔をされてしまった。きっとみんなが楠雄くんを探しているせいで、私もその一員と勘違いされているのだろう。その気持ちはとてもわかるが、少し傷付く。




*まえ つぎ#
もどる
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -