第17χ LOVE FANTASY(解決編)B




灰呂の推理はこうだ。

凶器であるサバイバルナイフは偶然平凡さんが道端で拾って保管していたものだろう。彼女のことだから、落ちているナイフを子供が拾ったら危ないとでも考えたに違いない。その推理は僕にも納得できる。

肝心の犯人だが、平凡さんと親しい間柄であると言う。証拠として強引に家に侵入した、また抵抗による部屋が散らかった形跡がなかったためとしている。
灰呂にしてはよく推理できていると思う。ここも異論はない。

では、その親しい人間は誰か。
事情聴取を全員に行ったが、平凡さんといざこざを起こす人間は集められた中にはいないとのこと。普段の学校での様子を見ても明らかだ。
本当だろうか。普段は見せないまでも蓄積されたストレスが一気に爆発する可能性は十分にあると思うが、とりあえず続きを聞こう。

「ただ、1人だけ可能性のある人間がいる。その人間は事情聴取を受けてはいない...そうだろう、斉木くん。」

僕は耳を疑った。僕が、犯人...だと?

「君は平凡さんの恋人だ。上手いかないことも多々あるだろう。付き合いによるストレスが溜まりに溜まって、彼女の部屋に偶然置いてあったサバイバルナイフで彼女を傷つけてしまった。」

言葉が頭の中に入ってこない。灰呂、お前は何を言っているんだ。

「腕についた深い傷跡は、ナイフから反射的に頭部を護るために腕を盾代わりにしたために負ったのだろう。平凡さんを傷付けたことによって正気に戻った君は慌てて逃げて、何事もなかったかのように再び現場を訪れた。彼女が残したメッセージであるの"十"のマークは"ψ"なんじゃないのかな。斉木くんのサイ、だ。」

全員の視線が僕の身体に突き刺さる。こんな結果があるわけがない、あっていいはずがない。
第一、僕がやるならもっと完璧にやってやる。それに平凡さんに恨みも妬みもあるわけがない。本編でも接点は然程多くはないだろう。
しかし、灰呂の推理を崩す手立てはない。冤罪とはこのようにしてできてゆくのか。

僕は警察に連れられてパトカーに乗り込む。
手にかけられた手錠に重みを感じる。これが罪の重みとでも言うのか。段々、本当に自身が過ちを犯したのでないかという気がしてくる。
もう考え事はやめよう、全ては片付いた。

僕はそっと瞼を閉じた。


テレビの画面が暗くなった。
恐らく、犯人視点で描かれたものなのだろう。まったく...推理ものだと思って期待して見てみたら、つまらなすぎた。
思わず怒りのあまりにテレビを壊しそうになってしまったが、テレビ自体に罪はない。冷静になれ。

さて...つまらないドラマも完結したことだ、寝るか。

THE END




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