第7χ 白熱、ドッヂボール対決!@




体育、それはもっとも苦手な授業。

正直言って運動は苦手だ。努力だけでは超えられない壁が確実に存在するからだ。外はもうすっかり温かくなって、寒さに身を震わすことはないが春特有の怠さが相まって逃げ出したくて仕方がなくなる。

しかも、男子と女子で行う種目が変わると言うのだから私のモチベーションは下がる一方なわけで。

「仁子、元気ないよ。怠いのはわかるけど頑張らなくっちゃ!」
「うん、そうだね...一応授業な訳だし。」

知予ちゃんに励まされてなんとか僅かばかりの気力で身体を動かす。今日の種目はバスケットボール。
ボールがうまく操れなくて苦戦しつつも、身体を動かしていると心が軽くなっていく気がする。私は大体やるまで腰がどうしても重くなってしまうからこうやって考えるより動いた方が楽なのだと気付かされる。すぐに忘れてしまうのだけれど。

ようやく気持ちの重さが取れてあたりを見回すと、なんと男子も外で体育をやっていたらしい。見た所ドッジポールのようだが...今の今まで気付かなかった。自身の試合が終わり、他のチームとの入れ替えでちょうど休憩の時間ができたので、先生の視線に気を付けながらこっそりと様子を窺うことにした。

「フゥンヌゥゥアー!!!」

男子側から授業とは思えないほど力の入った声が聞こえてくる。こんなに体育で全力を尽くす人なんてうちのクラスに1人しかいない。灰呂くんだ。

灰呂杵志、うちのクラスの委員長で熱血漢。熱血漢故に何事にも全力で挑む姿勢はいい意味でクラス全体が巻き込まれていくから、委員長として適任だと思うのが私の所感だ。たまに暑苦しすぎるのが傷だけれど。
それに比べて楠雄くんは相変わらず無表情で灰呂くんの勢いにも巻き込まれずクールだ。そういうところが格好いいし、憧れてしまう。

そうこうしている間に楠雄くんの手にボールが渡る。さっきの顔面にボール当たっていたみたいだが問題なさそうだ。眼鏡の上から当たったのに痛くないのかな?

「斉木君!本気で投げるんだよ!!」

灰呂くんからの助言に楠雄くんのオーラが変わった気がする。

...人が死ぬんだぞ?...

灰呂くんを見つめる彼の眼に思わず背筋がぞくっとしてしまった。なんだか死ぬとか聞こえたような気がするけど、きっと気のせいだ。ドッヂポールで死者が出るはずはない。

自身を納得させようと何度も頷くように頭を振っていると、再びチームの入れ替えになってしまった。もう少し見ていたいけど、渋々私はコートの中に入っていった。





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