第50χ オルファナスストーリー(後編)A




城門に向かうと、そこは戦いに備えての準備が行われていた。大砲に弾薬を詰めるもの、装備を整えるもの様々だ。兵士とは言え、ネクロソフィアと戦うことは容易なことではないことが窺い知ることができる。城門にはただならぬ緊張感あって、思わず息をするのも忘れてしまいそうになった。

「お前達、新顔だな。今の状況では兵でなくとも人の手を借りたいところではあったから助かるぜ。」

声をかけて来たのは鎧に身を纏った男性だった。歳は35から40くらいだろうか。左目の傷が強者のオーラを引き出しているように見える。

「ネクロソフィアの連中には困ったもんだぜ。まさか王国まで攻めてくるとはな。だが、奴、ヤツらの好きにはさせないぜ...おっと、名乗り忘れてたがオレはトムだ!よろしくな!」

トムが握手を求めるように差し出してくる。私達2人とも社交的ではないので戸惑っていれば徐々にトムの表情が暗くなっていく。

「おい何だ、握手も出来ねェってのか...?怪しい野郎達だな...さてはネクロソフィアの仲間か...?」

トムが持っていた剣の刃がキラリと光って、敵対心むき出しにしてくる。なんと面倒な、これが文化の違いというのだろうか。しかし、こんなところで無駄に戦うつもりなんて毛頭ない。私は慌ててトムの手を握って笑みを返すと俺達ァ戦友よ!とあっという間に機嫌を直してくれた。何とかこの場は収められたようだ、よかった。

そんなやりとりをしているといよいよネクロソフィア達がやって、城門前は戦場と化した。
私達も戦いに参加する。楠雄くんは持っていた剣を振るって、私は持っている杖を振り回して殴りつけてゆく。...杖の使い方じゃない?それは仕方がない。この世界の剣は重くて振り回せたものじゃないし、こうするしか私には戦う術がないのだ。

トムもやる気満々にネクロソフィアと戦うもいつの間にか瀕死の傷を負っていた。まだ1時間も経ってないのに!持っていた傷薬をトムに差し出すけれど、それもすぐに底をついてしまった。
楠雄くんもネクロソフィアの数に流石に顔に疲れが出て来ている。そんな状況下でろくに戦えず、トムと楠雄くんに護られているなんて、もどかしくて仕方がない。私も...みんなの力になりたい!

突如、身体の中が熱くなってゆく。力が湧き上がってくる感覚に戸惑っていれば、脳内からかすかに聞こえてくるどこか安心するような柔らかな声。私はその声を復唱するように唱える。

汝...悪なる者から聖なる力により我等を守り給え。
エクセル!!

唱えた呪文に応えるかのように晴れ渡っていた空には暗雲が立ち込め、ゴロゴロ雷鳴響き渡ったと思えば、ネクロソフィアめがけて降り注ぐ雷。私達の周囲のネクロソフィアかまとめて吹き飛んでしまった。これが、私の力...これなら戦える!

次々にやってくるネクロソフィアを楠雄くん達と共に討伐してゆけば、日が暮れる頃には全滅させることができた。

「やっと終わった...私達は勝った?」

エクセルを使うには相当の体力が必要となり、戦いを終えた頃には立っているのがやっとなくらいだった。楠雄くんが私のもとにやって来てよくやったというようによしよしと髪を撫でてくれる。

よかった...私は、楠雄くんを護れ...。

ハッと目覚めたら、私は自室のベッドで横になっていた。
夢だったのだろうか。けれど、何故か身体が重くてすぐには起き上がれそうにない。何気なく天井に向かって手を伸ばすと、私の右手には夢で楠雄くんからもらったブレスレットが輝いていた。

...夢じゃ、なかった?

The END




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