第40χ 君の隣にいるために@




放課後、楠雄くんに呼び出されて屋上に来ている。
まだ冬の真っ只中であるから、冷たい風が吹く度に身震いが止まらなくなる。慌ててこっちに来てしまったからうっかり防寒着を忘れてしまった。ちゃんと着てくればよかった。

彼が話したいことは大体予想がつく。彼の持つ超能力者のことだろう。今までみんなに隠してきたということは知られたくない事実で、それを知ってしまった私を口止めするつもりなのか、はたまたその超能力を使って何かされるか...それは私にもはわからない。

正月その事実を知ったみんなの記憶からは、楠雄くんが超能力者であることは忘れられているみたいだった。海藤くんは楠雄くんは中二病だったって聞いたし、照橋さんは彼は人見知りだから私がその心を溶かしてあげなきゃと使命感を感じているようだった。灰呂くんは...何だったかな。長々説明を聞いたけど忘れてしまった。

私としては楠雄くんの望むようにしてもらって構わないと思っている。彼に私がいつ口を滑らせるんじゃないかと毎日怯える生活は送らせたくはない。もし私が同じ立場であっても、絶対にごめんだと思うから。

重たい鉄の扉が開いて楠雄くんがやって来た。
向かい合うような形で彼と見つめ合う。じっと私を見据える瞳に気持ちが吸い込まれそうになる。けれど、言わなければならない。私の気持ちを楠雄くんに。

私はゆっくりと口を開いた。

「楠雄くんが話したい様って、超能力の...ことだよね?」

楠雄くんがコクリと頷いた。わかっているなら話が早いと、ゆっくり歩み寄ってくる。よくよく見れば彼の手にバールの様なものがいつの間にか握られていた。

「私は楠雄くんの気持ちを尊重したいと思ってるから、したい様にしてくれて構わないよ。」

本当は記憶なんて消されたくない。彼の超能力も含めて全てを受け入れていきたいのに。彼がそれを望まないのなら、私にそれ以上のわがままを言う権利なんて全くない。

「どこまで記憶が消えるかはわからないけど...私はどんな楠雄くんも、大好きだからね。」

あぁ...ついに言ってしまった。楠雄くんは目を丸めて驚いている。最後に彼の貴重な表情が見られてよかった。
私はゆっくり瞼を閉じた。





*まえ つぎ#
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